しずこさん:「暮しの手帖」を創った大橋鎭子 

暮しの手帖社(289.1/O)

女手ひとつで家族を養わなくてはという切実な理由とはいえ、それでは自分が起業しようという発想はやはりかなり大胆だったはず。そんな社会の常識など飛び超えて、女性を元気づける雑誌を平和の世の中のために、というぶれない信念を胸に一直線に駆け抜けたパワフルな人生。困難に対する彼女の「突破力」には、人との出会いやつながりの大切さがいつもかなめにあったことも考えさせられる。(A)

 

セーラー服の歌人鳥居:拾った新聞で字を覚えたホームレス少女の物語

岩岡千景著 KADOKAWA(910.26/To67)

幼少のころの母の自殺、児童養護施設での虐待、貧困からホームレス生活へ。心の病も抱え、責め苦の様な生きづらさの連続だが、本書にふしぎと閉塞感が無いのは、それでも短歌の創作に打ち込み、他者との絆を求めることを諦めない彼女の前向きさと、さらにその生きづらさを個人の枠を越えた社会制度の問題として見落とさない著者の視野の広さによるのかもしれない。(A)

 

パリ同時テロ事件を考える

白水社編集部編 白水社(316.4/P)

2015年パリ。1月のシャルリ・エブド社襲撃事件に続き、11月にまたしても同時テロ事件が発生し、数多の犠牲者が出た。今年の3月にもベルギーのブリュッセルで連続テロが起こっている。何故かくもテロは続くのか。テロによる脅威が他国のことでは済まされなくなった今、その歴史的背景と現在の状況、未来はどうなるのかを知っておきたい。(Y)

 

物欲なき世界

菅付雅信著 平凡社(331.8/S)

若者がモノを買わなくなったという。かくいう私も、別に若くはないが、どうしても欲しいというモノが思い浮かばかったりする。これは、お金のある無しとは関係ないようだ。また、先進国共通の現象だとも。物欲のない世界とはどんなものなのか、これからのライフスタイルについて考えさせられる。(Y)

 

チェリー・イングラム:日本の桜を救ったイギリス人

阿部菜穂子著 岩波書店(289.3/I)

毎年3月頃のニュースを見るたびに日本では「桜=ソメイヨシノ」なのだと思う。しかし明治初めくらいまでは日本にはいろいろな桜があり、イギリス人園芸家イングラムはその美しさに魅せられた。ところが明治後期あたりからソメイヨシノが広まり始め、失望したイングラムはイギリスで多様な種の保存に努めた。彼がイギリスで大切に守り、日本に「里帰り」させた品種もあるという。戦争で桜もすべて焼けてしまったあと日本全国で猛烈な勢いで植えられたのはまたしてもソメイヨシノだった。今、それらの桜は老木となり、維持が困難になっているところもある。これから春の眺めはどうなるのだろう。(M)

 

無戸籍の日本人

井戸まさえ著 集英社(324.8/I)

今日本には1万人以上の無戸籍の人がいるという。著者の子どもも一時無戸籍だった。法的に手続を踏んで離婚、再婚をしたというのに「300日ルール」にひっかかってしまった。うろたえる著者に市役所の役人は「離婚のペナルティ」だと言い放つ。無戸籍者が生まれる理由はいくつかあるが、女性に不利な「家意識」が未だに残る日本社会の在り方が大きく関わっている。そして苦しむのは無戸籍者として生まれ育つ子どもたちだ。 (M)

 
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