ぼくは君たちを憎まないことにした

アントワーヌ・レリス著(956/L53)

昨年の11月、パリで起こった同時多発テロで130人以上の人々が犠牲になった。著者の妻もその一人で、彼は小さな息子とともに後に残された。妻を奪った、憎んで余りあるテロリストたち。それなのに、「憎まないことに」したという。何故? そう決心してからもどれだけの悲しみと苦しみ、葛藤があったのだろう。(Y)

 

カンパン夫人 : フランス革命を生き抜いた首席侍女 

イネス・ド・ケルタンギ著 白水社(289.32/C)

カンパン夫人は、長年フランス王妃マリー・アントワネットの首席侍女を勤めた女性であり、激動の革命の時代を生き抜き、後に女子教育に力を注いだ。本書は、その多くを夫人の回想録に拠っているが、当時の宮廷生活や革命の有様など知る上でも参考となろう。また、王妃について、傍近く仕えた者が知りうるエピソードから、これまでとは違った新しい姿が見えてくるかも。(Y)

 

僕は少年ゲリラ兵だった:陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊

NHKスペシャル取材班著 新潮社(219.9/N)

中東やアフリカでの少年兵、ISの子どもによる自爆テロなどの報道に怒りの声をあげながら、どこかそれは遠くの国の特別なことと思っていないだろうか。しかし太平洋戦争末期、沖縄では10代の少年たちで構成されたゲリラ戦部隊があったのだ。彼らは敵を10人殺したら死んでもいい、と思わされ、死ぬことを何とも思わなくなった。さらには敵だけでなく、仲間内で殺したり、軍医が殺した、ということもあったという。ひとたび争いが始まると止めることは難しい。それは国家間の争いに限らない。(M)

 

大学生、限界集落へ行く

専修大学経営学部森本ゼミナール編 専修大学出版局(318.6/D)

住民がどんどん少なくなっていき、高齢者ばかりになった集落。生活するには厳しいことはたくさんあるが、自然は豊かで食べものもおいしく魅力たっぷり。日本全国に増えつつあるこうした地域のひとつ、南魚沼市辻又を活性化する事業に学生たちが名乗りをあげた。まず1週間現地調査のため滞在し、そのあと活性化のための策を練る。新潟県が募集した事業は単年度のものだったが、学生たちは辻又との結びつきを深め、その後も活動を継続している。東京と地方、若者と高齢者をつなぐ役割を果たしているのだ。   (M)

 

図説 戦時下の化粧品広告 1931-1943

石田あゆう著 創元社(674.9/I)

「戦時下」でも化粧品広告は意外なほど明るくきれい。そして女性のお肌の悩みは今も昔も余り変わらないのだなと思わせる。とはいえ戦局が進み女性も総動員される時代になるとコピーも「素肌美」を重視し「働く女性の健康美」「国産」をアピールするなど、化粧品が「必要品」であり続けるべく力点を巧みに移していったこともうかがえる。多数の図版が見応え十分!(A)

 

貧困子供のSOS:記者が聞いた、小さな叫び

読売新聞社会部 中央公論社(369.4/Y)

子供の貧困の原因はとても複雑だ。しかし子供に一切の責任が無いことは確か。にも拘わらず、貧困は子供の向上心や自立の意志さえはばみ、一度しかない人生の将来への希望をも絶ち、心に深い傷を負わせる。子供自身からも取材されたつらい体験に、つい言葉を失いそうになるが、支援を視野にいれた記者たちの現実的な姿勢に少し救われる感じがする。  (A)