帳簿の世界史

ジェイコブ・ソール著 文芸春秋(336.9/S)

誰が見ても疑問の余地がないようにお金の流れを明確にしておくこと-これは、自分の小遣い帳レベルならともかくとしていやしくも人のお金を扱うときには基本中の基本だろう。しかし、いかにこれが守られていないことか。国家の場合なら帳簿はその国の政治がうまくいっているのか、あるいは危機に瀕しているのかを冷徹に示す。支配者がそれを自分の失政の証とみなして目を背けたりすれば、管理はルーズになり、腐敗がはびこっていく。帳簿は国の運命を左右するといってもいいのかもしれない。ベストセラーになった『武士の家計簿』を思い出してしまった。(M)

 

紋切型社会:言葉で固まる現代を解きほぐす

武田砂鉄著 朝日出版社(304/T)

この本を読むとあなたは言葉を話せなくなる-というと大げさだが、いかに日頃自分の口にする言葉が「紋切型」であるかを思い知らされ、次にその言葉を口にするときにためらってしまうのだ。これは言葉だけの問題ではない。思考パターンが「紋切型」ということを意味するのだ。あるいはその逆で「紋切型」フレーズばかりに頼っているから思考もそのようになるのか。誰もが口にするフレーズでそれさえ言っていれば大丈夫、誰からも文句はつけられない・・・。それでいいのか?著者はユーモアたっぷりに、でも鋭く突っ込んでいる。(M)

 

葬送の仕事師たち

井上理津子著 新潮社(385.6/I)

数年前、たまたま「おくりびと」という映画を見る機会があり、納棺師という仕事があるの初めて知った。本書は、葬送の仕事に携わる人々の生の声を纏めたもの。プロ意識の高さには頭が下がる。この職業を目指す若者も結構いるそうだが、何故なのか、興味をそそれらた。(Y)

 

イスラムは本当に危ない世界なのか

宮田律著 潮出版社(292.8/M)

イスラムと聞いて、テロや過激派組織ISISを思い浮かべ、何だか危険なイメージを持ってしまう
私のような者にはおすすめの本かもしれない。イスラム研究者である著者によれば、それは食わ
ず嫌いだからなのだという。先入観なしにイスラム社会をみてみれば、今まで気がつかなかった
何かが見えてくるかもしれない。(Y)

 

ソーシャルメディアの罠

宮田穣著 彩流社(007.3/M)

LINE、Twitter、Facebookといったインターネット社会のソーシャルメディアは、おもにスマホの急速な利用の拡大による浸透を通して、「リアル世界」の人間関係そのものにも影響を与えつつある。教員として日々女子大生のソーシャルメディア事情を目の当たりにしている社会学者が、「同調圧力の罠」、「依存の罠」、「思考停止の罠」などソーシャルメディアの影の部分に焦点を当て分かりやすく解説する。あなたはまだ「罠」にはまっていませんか?(A)

 

日常に侵入する自己啓発:生き方・手帳術・片づけ

牧野智和著 勁草書房(361.5/M)

片付かない部屋を見回し、「私も断捨離?」などとつい言葉がでてしまう。「断捨離の」究極の様な「ミニマリスト」の
生活スタイルに瞠目したり。しかしそもそもなぜ掃除、片づけや毎日使う手帳といった本来は「日常の些細なこと」があたかも人生の生き方、人生の成功、不成功を左右する影響力を持つかの様にに思えてくるのだろうか?本書はそのような「日常(の心理)」に侵入する自己啓発本を分析、その成立の背景やそれらがベストセラーとして受容される現代の生のあり方を考える。(A)