小水力発電が地域を救う:日本を明るくする広大なフロンティア

中島大著 東洋経済新報社(543.3/N)

電力というと今まではダムや火力発電所、さらには原発のように巨大な建造物から作られるもの、そして日本中に張り巡らされた電線から供給されるもの、つまり市民レベルでは手が出せないものというイメージだったのではないか。そのイメージは崩れつつある。小水力発電は、棚田や用水路を活用して限られた地域であれば十分にまかなえるくらいの電力を生み出せる。あらゆるものが都市に集中し、活力を失っている山村が自立するための切り札となりうるものだ。(M)

 

サイレント・マザー:貧困のなかで沈黙する母親と子ども虐待

石川瞭子著 青弓社(369.4/I)

母親の子どもへの虐待のニュースに接した時、大方の反応は子どもに同情し、なぜ母親が、と非難したり困惑したりするというものだろう。しかしその陰には貧困、母親の育った環境、周囲の無理解など母親を虐待にまで追い込む様々な要因が潜んでいるのだ。子どもだけでなく母親も声をあげられない。報道されるようなケースが特別なのではなく「サイレント・マザーはサイレント・マジョリティ」であり、私たちが気がついていないだけのこと。苦しんでいる母子を温かく包み込むような社会が求められている。 (M)

 

絵本を深く読む

灰島かり著 玉川大学出版部(909/H15)

『かいじゅうたちのいるところ』『ピータラビットのおはなし』など親しまれている絵本も多く登場する。が、著者の眼差しにかかると何気なく読んでいて気づかなかった「謎」や「発見」がそこに浮かび上がる。小説にも漫画にもない「絵本の力」がわかる本。(A) 

 

ヴィクトリア朝英国人の日常生活:貴族から労働者階級まで 上・下

ルース・グッドマン著 原書房(233.06/G/1・2))

どんな時代にも日常生活がある。本書でもくろまれているのも私たちが日々過ごしているような日常の現実への「タイムスリップ」。BBCの歴史ドキュメンタリーにも出演し当時の生活の実際を色々体験もしてみる著者の説明は詳細で具体的。アヘンで赤ん坊を寝かしつけたとういうような驚きの「日常」もあるが、この時代の小説や映画を理解するにも役立ちそうだ。(A)  

 

津波の霊たち : 3.11死と生の物語

リチャード・ロイド・パリー著 早川書房(369.3/P)

7年前に起こった東日本大震災は、1000年に一度の大震災と言われる。原発と津波という二つの大災害をもたらし、多くの人々が犠牲となった。本書は、20年以上日本に暮らす英国の記者による、津波と人々のかかわりについてのノンフィクション。石巻市の大川小学校では84名の児童・教員が津波に呑み込まれ...。忘れてはいけない。まずは手に取って頂きたい本。(Y)

 

わたしは10歳、本を知らずに育ったの。: アジアのこどもたちに届けられた27万冊の本

鈴木晶子(等)著 合同出版(016.2/S)

「本があって、自由に手に取って読むことができる」ことを当たり前と思って暮らしていると、それがどんなに有難いことなのか忘れてしまう。しかし、世界に目を向ければ、貧しさゆえに学校にも行けず、従って読み書きができず、本など見たこともないという子どもたちがたくさんいるのだ。著者の方々が所属するシャンティ国際ボランティア会では、36年の長きにわたってアジアの子どもたちに本を送り続けている。私も本に関わる者の一人として、まず地道な活動の内容を知ることから始めたい。(Y)