「自然」という幻想:多自然ガーデニングによる新しい自然保護

エマ・マリス著 草思社(519.8/M)

とても発想の転換を求められる本。自然の「本来の姿」への回復という自然保護は非現実的な幻想にすぎないと著者は言う。在来種の保護というのも自然保護にはつきもの。しかしある島では外来種は在来種を駆逐したがそれ以前よりその島の生物種は増え生態系の多様性は増した。守るべきは過去の姿ではなく自然界の多様性であり、取り組むべきは人の手で地球上の「自然」を増やす事。それはわたしたちの身近にある草地や庭から始まっていく。(A)

 

くらべてわかるオノマトペ

小野正弘著 東洋館出版社(814/O)

「すやすや」と「ぐっすり」はどっちが良く眠っているでしょう?「へとへと」と「くたくた」ではどっちのほうが疲れている?そもそも「感じ」の効果をねらって使うオノマトペの違いを論理的に説明できるのだろうか?と思ってしまうが、著者は日常よく似た状況で使われる二つのオノマトペについてどちらの効果が強いかを「判定」。昔の用例を引用したりしながらの説明にはなるほどと思わせる説得力がある。思考の「もやもや」を「すっきり」させるヒントも学べそうだ。(A)             

 

紛争地の看護師

白川優子著 小学館(329.3/S)

著者は7歳のとき「国境なき医師団」(MSF)を知り、憧れた。働きながら勉強して看護師になったが、MSFに加わるためには英語が必要と言われ、また働きながらお金を貯めて語学留学。そして今、シリアやイラクといった紛争地で医療に従事している。久々に日本の実家でくつろいでいるときでも緊急派遣の連絡があれば友達との約束もキャンセルして出発する。報道もされない場所で医療を必要としている人々を見過ごせないという思いで。  (M)  

 

百年の女:『婦人公論』が見た大正、昭和、平成

酒井順子著 中央公論新社(367.21/S)

雑誌『婦人公論』は1916(大正5)年に誕生した。同じころにスタートしたライバル女性雑誌の多くが消えていく中、3つの時代にわたって読み続けられ、ついには4つめの時代に突入することになる。雑誌はその時代のさまざまな情報の宝庫である。時事問題もあればスキャンダル記事もある、今も変わらない女性へのバッシングなどなど。著者は創刊号からこの雑誌を全て読みこみ、女たちの100年間の歴史を一見軽やかに、しかし実はぐっさりとえぐる。 (M)

 

NO-NO BOY : 日系人強制収容と闘った父の記録

川手晴雄著 角川書店(334.4/K)

アメリカ生まれの日系2世の父は、第二次世界大戦中、アメリカへの忠誠を拒否した「No-no Boy」であった。息子である筆者は、亡父の遺品の中から当時の日記を見つけ、調べ始める-収容所や、アメリカに忠誠を誓った日系人部隊の勇敢な戦いぶりは耳にしていても、忠誠を拒否した人々のことは余り取り上げられることはなかったのではないか。戦争中の強制収用について知る貴重な一冊である。(Y)

 

司書のお仕事 : お探しの本は何ですか?

大橋崇行著 勉誠出版(013.1/O)

某市立図書館に採用された新任司書が、先輩たちに助けられながら成長していく話である。図書館学の授業で使うような「図書館とは何か」といった堅い本ではなく、表紙はライトノベル風で、中身は小説仕立てになっている。現役の司書が書いており、楽しく読み進めながら具体的な図書館の仕事も知ることができる。図書館の仕事に興味を持っている、特に若い学生の方に如何でしょう。(Y)