鎖国の地球儀:江戸の<世界>ものしり帖

松尾龍之介著 弦書房(290/M)

江戸時代の天文学者、西川如見という人が当時の世界について書いた『華夷通商考』を、イラストを使ってわかりやすく紹介。著者は完成までに5年の歳月をかけたという労作である。鎖国の時代、オランダを通して世界の諸事情が入ってきていたのは知っていたけれど、18世紀の初めに民間レベルで、世界についてこれほどのものが著され出版されていたとは。当時の人々の目に映っていた世界と、今のそれを比べながら読むのも面白い。(Y)

 

猫の国語辞典:俳句・短歌・川柳と共に味わう

佛渕健悟等編 三省堂(911/N62)

500人の作家さんによる、猫が出てくるおよそ2400の猫の句と、猫に関する言葉を集めた本。今までこうした本があったでしょうか。猫が大好きな人も、どちらかというと俳句や短歌の方に関心があるという人も、楽しめて癒されるのでは。どこから読んでも面白い。それにしても、猫の好きな作家さんて本当にたくさんいるんですね。(Y)

 

新・贈与論:お金とのつき合い方で社会が変わる

林公則著 コモンズ(338.2H)

お金は災いの元となる一方で人を幸福にもできるはずだ。ドイツのGLSグループは「お金は人間のためにそこにある」というスローガンを掲げ「地球を世話する」農業や脱原発の電力会社などへの支援を行っている。日本でもこのような取り組みが始まっており、沖縄などの4つの団体の活動が紹介されている。(M)

 

荷車と立ちん坊:近代都市東京の物流と労働

武田尚子著 吉川弘文館(685.8/T)

リヤカーを引いて引越し、という光景はもはや昔のものとしても、人が車を引っ張る(人力車も同様)ことは日本人にとってはなじみ深いものだろう。しかし明治の初めに日本にやってきた西洋人にとって牛馬の代わりに人間がその役目をすることは驚きだったようだ。坂の多い東京では荷物を満載した荷車は大変だ。坂道で後押しして助けるのは坂の下で待ち受ける「立ちん坊」だった。荷車や立ちん坊を通して東京の物流の歴史をたどる。(M)

 

ヘンな浮世絵:歌川広景のお笑い江戸名所 

日野原健司著 平凡社(721.8/H)

江戸の名所絵50枚全部「お笑い」の『江戸名所道戯尽(えどめいしょどうけづくし)』。投げた木材の束の縄がほどけて受取りそこなったり、夕立の隅田川の橋の下で河童と雷神が喧嘩など、あれかなと思い浮かぶような広重や北斎の有名な名所絵を思い出させつつ、ひたすら脱力系のお笑いが繰り広げられる。新年の初笑いにぴったし(?)。(A)

 

ぼくは13歳、任務は自爆テロ。:テロと紛争をなくすために必要なこと

永井陽右著 合同出版(316.4/N)

終わらない内戦によりテロが日常化し、若者の自爆テロが相次ぐソマリアで、テロ組織に取り込まれるソマリアの若者たちの支援を目指し、大学在学中から著者はNGOを立ち上げる。「ギャング」とよばれる不良グループから抜けられない若者たちとの接触と彼らを巻き込もうとするテロ組織が存在する危険に満ちた状況の中での試み。紛争・テロへの草の根ならではの新なアプローチが「対話」や「多様性」の意味を問い直す。(A)