ネットが生んだ文化(カルチャー): 誰もが表現者の時代

川上量生監修 角川学芸出版(007.3/N)

インターネットを使って誰もが気軽に意見や情報を発信できる時代。今、ネット社会はどうなっているのかを、複数の専門家が語る。本書で取り上げられている「炎上」「コピペ」「祭り」などは、しばしば耳にする言葉だが、特に「炎上」の項は、インターネットのもつ怖さを痛感させられる。(Y)

 

納豆の起源

横山智著 NHK出版(619.6/Y)

子供のころから納豆を食べてきた。余り好まれないという西日本を除けば、納豆は今や日本の国民食ともいうべきもの。しかし、納豆は日本だけのものなのか。著者は、納豆のルーツを求めてアジアに旅し、タイやミャンマーなどで「納豆らしきもの」を発見する。口絵ページに収められた各国の「納豆」のカラー写真が読者の目を楽しませる。(Y)

 

上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子:三人寄れば、物語のことを

上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子著 青土社(910.26/U36)

なんと豪華な顔触れ!今をときめく物語の語り手そろい踏み-とまるで宣伝コピーのようだが、アンデルセン賞受賞の上橋氏、和もの、洋ものどちらもO.K.のファンタジー作家の荻原氏、一方、佐藤氏は現代を生きる少年少女を描くことが得意。この3人が物語の生まれる場所、物語の紡ぎ方などをしゃべりまくる。物語に対する立ち位置は三人三様であり、お互いの作品を読みときあうその深さは作品に新しい魅力を与えてくれる。もともとのファンはもちろんだが、まだ彼女たちの物語を読んだことのない人もきっととりこになって、読んでみたくなること間違いなし。(M)

 

何を怖れる:フェミニズムを生きた女たち

松井久子編 岩波書店(367.21/N)

フェミニズムはともかく、いわばその源であるウーマン・リブという言葉を聞いたこともないという学生は少なくないのではないか。1970年に誕生したウーマン・リブの運動にいろいろな形で出会い、その後の人生でも関わり続けた12人の女性たちへのインタビューがしばらく前に映画になったが、そこに収めきれなかったものをまとめたものが本書である。映画ではインタビューされたいわば「著名」な女性たちだけでなく、活動に集まった多くの女性たちの生き生きとした表情が素敵だった。私たちの「今」は彼女たちの努力の賜物であり、次へつないでいかなければならない。(M)

 

南国港町おばちゃん信金:「支援」って何?"おまけ組"共生コミュニティの創り方

原康子著 イラスト田中由郎 新評論(338.7/H)

国際協力NGOの一員である著者が、南インドの港町で個人型の「マイクロクレジット」である「おばちゃん信金」を立ち上げようと試みる悪戦苦闘(といっても深刻さは全くなし)の日々が、ありのままに描かれている。ここで目指されている「コミュニティの課題をその土地の人たちが解決できるよう手助けする」という「援助しない技術」は、現実的な「支援」とは何かをあらためて考えさせられると同時に、今の日本社会や私たちの日常の様々な局面でも必要とされる考え方であるようにも思われた。(A) 

 

イラストで読む印象派の画家たち

杉本美帆子著 河出書房新社(723.05/S)

読み始めれば、カラフルなイラストと、面白さ抜群(ほんとに笑える時も)の解説文で11人の画家たちといっぺんに親しくなれるはず。印象派についてや、絵の解説もわかり易く、また意外に詳しかったりする。「毛糸のセーターに長靴、ひげぼうぼう。庭づくりが趣味」(本文より)。さてこの画家は誰でしょう?答えは本書で! (A)