ルース・ベイダー・ギンズバーク -信念は社会を変えた!-

ジェフ・ブラックウェル&ルース・ホブディ編 橋本恵訳 あすなろ書房(289.3/G)

 昨年亡くなった、連邦最高裁判事ギンズバーク氏へのインタビュー。連邦最高裁判事は終身なので、86歳で亡くなるその日まで現役。女性の社会進出自体が厳しく、当時女性では全米で3%しかいなかった弁護士を子育てをしつつを志し、連邦最高裁判事へ。才能と限りない努力、それを支える人との出会い。ギンズバーク氏の人生哲学が、シンプルな言葉のなかに力強く凝縮されている。(A)
                              
 

 

日韓キリスト教関係史資料Ⅲ 1945-2010

富坂キリスト教センター(編集) 新教出版社(192.2/N73/3)

本の装丁を見ただけで、開いて読む気になる本ではないという印象を受ける。厚さ5cm、しかも三巻ものの1冊だ。しかし、読む価値を確信し熟読せねばならないと思うのは、混迷を深める時代を見通す目を養ってくれるという期待のゆえである。書物は人間が歩んだ歴史を記す。歴史から学ぶ、ということは本を読むこと、それを通じて人々の声を聴くことだ。
「嫌韓」という民族差別が素知らぬ顔をして日常語に入り込む今、留学を目指す日本人学生がいたら、かの国の土を踏む前に一度、手に取ってほしい。本書は、無数の「同時代に生き」ている人々が、歴史の当事者である人間として個をどう生きるかを問いかけてくる。(T)


 

 

 

アニメと声優のメディア史 

石田美紀著 青弓社(778.7/I)

  アニメの世界の森羅万象にいのちを吹き込んでしまうすごい人というのがわたしの声優に対するこれまでのイメージで、ゆえに女性の声優が少年も演じるということもまた当たり前のことと認識していた。そこにジェンダーの問題が潜んでいたということに改めてはっとさせられた。性を超えてキャラクターを演じるという意味が、声優自身の女性としての生き方やファンとの関係などまでを取り込んで深く考察されている。(A)

 

 

平安貴族の住まい: 寝殿造から読み直す日本住宅史

藤田 勝也著 吉川弘文館(521.8/F)

平安時代の貴族の住宅は現存せず、立証する史料も乏しい。著者は先人の業績を認めつつ、これまでの寝殿造の定義が史料の誤読によるものと指摘する。そして、寝殿造の成立(10世紀)以前と中世・鎌倉時代以後の共通点の考察から本質に迫る。
 豊富な図版は、図面の単位(一間=約182 cm)を換算しながら読むと具体的に想像できて楽しめます。また、源氏物語の住空間、新古今和歌集までの歌合の「場」や、室町時代の連歌の「座」の実際に関心がある人とって、内部の使い方に触れた箇所は腑に落ちると思います。(N)

 

 

少女たちがみつめた長崎

渡辺考著 書肆侃侃房(210.75/W)

長崎西高放送部員たちが、3冊の日記や取材から被爆した元女性徒たちの体験を見つめる。授業が魚雷研磨の時間へと変化した学生時代。被爆後の、女性ならではの苦しみや葛藤。彼女たちが残した日記からは、運命のあの日までもがより鮮明に伝えられている。平和な未来を望むなら、手にして欲しい一冊である。(C)

 

 

コミュニティ・オーガナイジング : ほしい未来をみんなで創る5つのステップ 

鎌田華乃子著 英治出版(309./K)

社会生活で困難なことに遭遇したり、周りの変化に納得できなかったりしたことはないだろうか。それが自分一人ではなく、同じ思いをしている人がいたら?どうせ何も変わらないし変えられないと思うのか、コミュニティ・オーガナイジングで突破できるのか・・・小学5年生の架空の問題をストーリー形式で紹介している。ハードルが下がり、実践してみたくなるかもしれない。(Y)