日本人は「食なき国」を望むのか:誤解だらけの農業問題

山下惣一著 家の光協会(610.4/Y)

農家の高齢化、後継者不足、TPPの問題等、日本の農業は様々な問題を抱えている。日本の農業はこのままでよいのか、この国で食料を作れなくなったら...。ことは農家にとどまらず、消費者の問題でもある。これからのあるべき農業の姿について著者から提言。自身も長いこと「百姓」を営んでいるだけに、説得力がある。(Y)

 

毒婦たち:東電OLと木嶋佳苗の間

上野千鶴子・信田さよ子・北原みのり著 河出書房新社(368.6/U)

表紙に大きな文字で「毒婦」、何とも刺激的なタイトルではないか、と思ったら、著者はあの有名な社会学者の上野千鶴子氏。平成の毒婦が惹き起こした事件を巡って、上野氏等3名が鼎談を繰り広げられ、木嶋佳苗等、事件当時世間を騒がせた女性が登場、男性との犯罪の違いなども浮き彫りにされる。現在も「毒妻」と呼ばれる某女が連日ニュースに取り上げられているが、女性は、ある意味男性より怖いかも。(Y)

 

戦争の教室

松本彩子他編 月曜社(391.1/S)

1901年生まれから1990年生まれという年齢も立場も様々な80人が戦争について語っている。年齢順に並んでいるので当然ながら最後のほうは戦争を知らない世代である。まだ二十代前半の旅好きの女性は旅先の韓国で、カンボジアで、パリで、「戦争」に触れる。「戦争」を知らなくても想像力をふくらませることで、それを「体験」することはできるのだ。大切なのは感覚を研ぎ澄ませることだろう。そして、今、何が起きつつあるのかを感じ取り、考えなければならない。(M)

 

おだまり、ローズ:子爵夫人付きメイドの回想

ロジーナ・ハリソン著 白水社(591/H)

階級社会が厳然と存在した時代のイギリスのメイドには、お屋敷の奥様の世話をし、何を言われてもひたすら従う-そんなイメージがある。そんなに横暴でなくても、少なくとも本書の語り手のローズのようにメイドがずばずば物を言っても大丈夫という女主人は珍しかっただろう。ローズが「典型的」なメイドではなかったのと同様、女主人のレイディ・アスターも「型破り」だった。そんな二人の時に火花の散るような(?)やりとりが面白く、いささかボリュームのある本ではあるがどんどん読んでしまう。レイディ・アスターは女性で最初のイギリスの国会の下院議員だったこともあり、政治や社会情勢に関するエピソードも興味深い。(M)

 

とらわれの野生:動物園のあり方を考える

ロブ・レイドロー著 リベルタ出版(480.7/L)

インドネシアの動物園の檻のコンクリートの床の上で力なく横たわる「緑色の」ホッキョクグマの痛々しい姿。体が緑色なのは、高温多湿の気候のため、本来寒さに対応するための空洞の粗毛のなかに藻が生えてしまったのだった。本書ではこの様に動物園の中で飼育されて野生本来の生き方を奪われた動物たちの現状を明らかにすることからさらに、野生動物の本当の姿と出会える彼らとの新たな向き合い方を展望していく。「動物園を見れば、私たちの人間性がわかる」(本書)という言葉は重い。    (A)

 

聖書の植物事典

H. & A.モルデンケ著 八坂書房(193.02/Mo22)

クリスマスシーズン到来の今、そういえばクリスマスの劇によく登場する「東方の三博士」の幼子イエスへの捧げ物、「乳香」や「没薬」ってどんなもの?そんな疑問にもこの本はうってつけなのだが、「聖書の植物」といっても扱っているのは、キュウリ、そらまめ、カラシナ、アロエなど、珍しくない野菜や植物も少なくない。しかし福音書の中ではイエスの体を防腐保存するためにアロエが使われたとあると、やはり聖書の世界ならではの、またその地域その時代独特だと感じたり・・・。植物のイラストも豊富で楽しめる。 (A)