このTシャツは児童労働で作られました。

シモン・ストランゲル著 汐文社(949.6/St8)

ノルウェーの少女が、ある日ブティックで見つけた安いTシャツをきっかけに、バングラディシュの児童労働の厳しい現実を知る-本書はノルウェーの話であるが、日本にも海外から安い品物がどんどん入ってくる。安さに惹かれてつい手を出してしまう。それが彼の地でどのようにして作られたか、なぜこんなに安く買えるのかに思い至ることもなく。1枚のTシャツが、様々なことを教えてくれる。(Y)

 

タカラヅカという夢 : 1914~2014

津金沢聰廣[他]編著 青弓社(775.4/T)

大正時代、「小さな湯の町宝塚に」産声を上げた宝塚歌劇は、今年で創立100周年を迎えた。幾多の危機を乗り越えて、一個の劇団がなぜかくも長きにわたって存続することができたのか。本書は、来し方を振り返りつつ、積極的に芸術の他分野との交流をはかる宝塚の姿を描く。(Y)

 

額縁と名画:絵画ファンのための額縁鑑賞入門

ニコラス・ペニー著 八坂書房(724.9/P)

美術展や写真で絵よりもはるかに大きな額縁に絵が収められている作品を見ることがある。本書の冒頭に画家は額縁にはいることを前提として絵を描いたとあるが、画家は額縁を選ぶことができたのだろうか。貧乏画家ではとても無理だろうし、お金持ちに頼まれて描いた場合は依頼者の好みに合わせただろう。画家自身が選んだ場合でも公募展に出すためにとりあえず安いものをつけたということもあったらしい。一方、画商は人目を引くために派手な額縁を好んだ。中の絵そのものの価値は変わらないはずなのに額縁によってその魅力が増すならば、その逆の不運な場合もあるのだろうか。今まであまり気に留めてこなかった額縁の奥深さ。これからは額縁にも注目!である。  (M)

 

ドレス・アフター・ドレス:クローゼットから始まる冒険

中村和恵著 平凡社(383.1/N)

聖書でも戒められているくらいに人は着るもののことを考える。見た目のこともあるだろうし、着心地、主義主張、戒律など様々なこだわりがある。そんなわけで著者は衣服から世の中を眺めてみた。文学を論じ、ブラジャーで国際問題を考え、鮭皮の服で動物保護、などなど。パリで「公式」に女性が市の許可なしにズボンをはいてもよくなったのは去年だったなんてびっくり、なのだが、著者はそこからさらに考えを巡らせる。時折はさまれる著者のイラストが楽しさをプラス。(M)

 

恋愛ドラマとケータイ

中村隆志編著  青弓社(361.45/N)

例えば、恋愛ドラマの人間関係は、ケータイメールの内容だけでなく、大事なメールを受けたケータイを胸にかかえるなど、ケータイの存在感自体もドラマの演出として役割を果たしている。本書は恋愛ドラマや流行歌に登場するケータイの役割や表現のあり方の詳細な分析(ドラマ中のケータイはモデル名の特定まで!)を通して、ケータイが私たちのコミュニケーションや文化に与えてきた必然的な影響を浮彫りにしようとしている。こうなると「スマートフォン・ヴァージョン」も期待したくなる。(A)

 

バカだけど社会のことを考えてみた

雨宮処凛著 青土社(304/A)

「個人の問題」や「個人の責任」と当人も認識している苦しみや生きづらさも実は社会情勢や時代背景とほとんど切り離しえない、と著者は考える。その観点に立てば、個人の抱える問題のほとんどは、他者と共有でき、その解決の道も外に開けていると考えられるのかもしれない。「生活保護」「原発」「衆院・参院選挙」など一見「固い」社会・政治の問題をそうした著者の目線で「考えてみた」一冊。(A)