表現力実践講座 英語コミュニケーション学科

2022年06月14日
 ゼミ/授業名:表現力実践講座

今、戦場で瓦礫に埋もれた死者の魂が、早く家族の元に還りますように。
戦いから、血を流して戻ってきた戦士たちが、どうか戦場に心を置き去りにしませんように。

人間社会学部 社会園芸学科 1年 水島栞

人間社会学部 社会園芸学科 1年 水島栞

学科を越えて授業を受けることができる恵泉では、私が担当する「表現力実践講座」にも、学科を越えて「表現」に興味を持っている学生が集まってきます。

授業が目指すのは、「写真と文章で、『今』をどのように伝えるのか?」です。

授業のこと、友人のこと、家族のこと、また世界のことなど、今には2022年の4月~7月に起きているおよそあらゆることが含まれるのです。

今学期は、ロシアのウクライナ侵攻に関係した作品がいくつも提出されています。

その中で、際立っていたのが上記の水島さんの作品でした。

水島さんは社会園芸学科ですから、学科で身近なバラの花をモチーフに、今起きている戦争を表現しました。

1行目では、ウクライナの戦場で亡くなった人たちの魂の救いを書いています。魂が家族と会うことで平安が訪れるように願っているのです。

2行目では、激しい戦場に身を置いた兵士たちが、置いてきてしまった記憶や心についてが書かれています。

激しい戦場で落としてしまった「心」。

ここで思い出したのが、沖縄の伝統文化に伝わる「マブイ落とし」です。人が心底驚いた時、マブイ(魂)をその場所に落としてしまい、結果、病気や放心状態が続くというのです。太平洋戦争の激戦地となった沖縄では、人口の1/4が亡くなり、「多くのウチナンチューがマブイを落とした」と聞いたことがあります。

ウクライナでも、きっと多くの人々が魂や心を落としているのでしょう。水島さんの作品では、それがロシア人かウクライナ人かは限定されていません。つまり銃を向けて戦う兵士たちの国籍を問うていないのです。

激しい戦場に心を置き去りにしないよう、女性として、母として、そして愛する者たちを戦場に送った者たちすべての魂を言葉に込めた「祈り」なのです。

担当教員:桃井 和馬

恵泉女学園大学特任教授 写真家、ノンフィクション作家 これまで世界140ヵ国を取材し、「紛争」「地球環境」「宗教」などを基軸に「文明論」を展開している。テレビ・ラジオ出演多数。第32回太陽賞受賞。公益社団法人「日本写真家協会」会員。主要著書に「和解への祈り」(日本キリスト教団出版局)「もう、死なせない!」(フレーベル館)、「すべての生命(いのち)にであえてよかった」(日本キリスト教団出版局)、「妻と最期の十日間」集英社、「希望の大地」(岩波書店)他多数。 大学では、「表現力実践講座」「国際社会論」「国際情勢論」などを担当。

桃井 和馬