ゼミ旅行で世界遺産「富士山」へ行ってきました! 歴史文化学科

2014年10月31日
 投稿者:笹尾典代
 ゼミ/授業名:笹尾ゼミ

笹尾ゼミは宗教学のゼミです。毎年、ゼミ生が研究テーマから行き先、旅程、予約手続き等まですべて自分たちで計画準備する泊まりがけのゼミ旅行を実施しています。昨年は20年に1度の遷宮の年を迎えた伊勢神宮に、一昨年前は(今年9月つい1カ月ほど前に政府が2016年のユネスコの世界遺産登録に向けて世界文化遺産に推薦することを正式に決めた)「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を訪ねて、長崎市内はいうまでもなく平戸、生月、そして船に乗って五島列島まで足を延ばし長崎県内各地を巡りました。そして今年は、昨年6月世界文化遺産に登録された富士山に、8月末の3日間、富士山の「お山じまい」の祭である「吉田の火祭」に日程をあわせて行ってきました。以下、3人のゼミ生に、このゼミの紹介を含めて今回のゼミ旅行の感想を語ってもらいました。

今年のゼミ旅行では昨年「富士山‐信仰の対象と芸術の源泉」という名称で世界遺産に登録された富士山に行ってきました。「日本宗教文化の基層にある<山岳信仰>を代表する富士山信仰の昔と今を探る」を研究テーマに、今回は特に「信仰の対象としての富士山」を学ぶ目的で、毎年8月末に富士吉田市で行われる鎮火大祭(「吉田の火祭」)への参加を軸に旅程を組みました。

初日は構成資産の一つである御師住宅(旧外川家住宅)を見学した後、「吉田の火祭」に参加し、祭の終了後は、その日私たちが宿泊した「筒屋」という400年以上前から今なお「御師の家」として機能している希少な宿坊での宴席に加えていただき、富士講信者の方々や地元関係者の方々から富士講や世界遺産登録後の富士山観光の現状と問題などについて貴重なお話を伺うことができました。二日目は北口本宮冨士浅間神社→馬返し~一合目→船津胎内神社など富士北麓の構成資産を巡り、三日目は5合目でご来光を拝してから御中道を散策して、午後は地元ガイドの方の説明を伺いながら忍野八海を巡りました。

メンバーには東京からの小さくて淡い富士山しか見たことがないという人も多く、それぞれに間近で富士山を見たときは大きな感動を覚えました。ただ残念なことに3日間とも天候に恵まれずついに富士山全容を拝することはできませんでしたが、これが天候の良い日で頂上から裾野まで全て見えたらと思うと山の持つ神秘的・宗教的威力というものにあらためて想いを馳せざるを得ませんでした。

初日に参加した「吉田の火祭り」は日本三大奇祭にも数えられる富士山の山じまいのお祭りで、北口本宮冨士浅間神社と諏訪神社の2台のお神輿が上吉田の町を練り歩きます。事前学習でこのお祭りの行程を最初から最後まで予習しましたが、実際に参加してみると机上での学習では決して得られない感動と発見がありました。とくに、この祭のまさにクライマックスともいえる、ススキの玉串を持ってお神輿を追いかけるように神社の境内(高天原)を七周走って周る儀式では、私たちを含め参加した者一同がたいへんな昂揚感と一体感に包まれました。その昂揚感の後には、御輿から神様の御魂を神社に移す神事が厳かに行われ、祭は終了しました。ひとつの祭を最初から最後まで見届けたのは初めてで、とりわけ最後の神聖で神妙な神事を目の当たりにして、祭というものの本義とその機能をあらためて体感できたように思います。

宗教学と言われると難しい印象があると思いますが、そのようなことはありません。最初は難しく思っていた宗教のお話も笹尾先生のわかりやすい説明で楽しく学ぶことができますし、私たちは普段気づいていないだけで実は深く宗教と関わっていることをこのゼミを通して実感するようになりました。笹尾ゼミでは日頃から日常生活で問題意識を持つことを大切にしています。今回のゼミ旅行も、新たな知見を得ただけでなく、メンバーそれぞれが各自新たな問題意識を持つことができた充実した3日間になりました。

(池谷藍・小林遥夏・高橋葉菜子)

担当教員:笹尾 典代

現代日本人の多くは宗教についてあまり深く考えたがらないし、自分とは無関係と思っている人も少なくないようです。が、一方で、お正月には初詣、お盆やお彼岸にはお墓参り、結婚式はキリスト教教会や神社で……。そう、そこに人間の「生と死」の営みがある以上、宗教という要素は私たちの身の周りにも自分の中にも必ずあるものです。宗教について一度自分なりに向き合ってみませんか。日常生活の中に埋もれているさまざまな「宗教的な問い」を掘り起こしながら、宗教についての思い込みや偏見に自ら気づくだけでも人間や世界についての見方・考え方がパアッと広がります。なにせ宗教って人間や社会の根源的な仕組みとパラレルですから。

笹尾 典代