理事長、学生に語る

2018年06月18日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

5月の末、岩村太郎副学長の企画で「キリスト教学入門」(岩村先生担当:対象1年生)と「心理女性学」(大日向担当:対象3~4年生)の特別授業として、宗雪雅幸理事長*の話を聴く機会をもちました。
題して『「生涯就業力」を磨く~きちんとした大人となるための「社会人基礎力」とは~』。

宗雪雅幸理事長のプロフィール
京都大学経済学部卒業後、富士写真フィルム(現:富士フィルム)入社、同社の社長・副会長を歴任。社長在任中にライバル会社コダックから不当な訴えを受けて米国のスーパー301条による制裁を受けそうになったが、500ページにも及ぶ詳細な反論書の提出、同反論書のインターネット上での公開などを行い制裁を回避することに成功。そのほか、空前の大ヒット商品、レンズ付きカメラ"写ルンです"を発売し、同社を大きく成長させた経営者として知られる(参考:リーダーたちの名言集)。2009年より恵泉女学園理事長。

宗雪理事長の話は、経済人・企業人としての経験を基に学生たちが社会で活躍するための「社会人基礎力」*を学生時代にいかに身につけるかということでした。
『ゲーテ』『ニーチェ』『小林一三』『ドラッカー』そして『聖書』の言葉など、日々心に留めている「いくつかの言葉」を記した配布資料を参照しながら、自身の学生時代や富士フィルム入社間もない若き日のエピソードなども織り交ぜたユーモラスな語り口に、学生たちは吸い込まれるように聴き入っていました。

*「社会人基礎力」とは、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力として経産省が提唱した「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)です。しかし、理事長はむしろ小林一三氏(阪急東宝グループ創業者)の言葉を基に、「正直さ」「礼儀正しさ」「仕事の速さと正確さ」「課題の改善改良に向けて考え、努めること」とし、そうした力を備えた社会人であれと常々学生たちに語っています。

学生たちの感想のいくつかを紹介いたします。

1年生

  • 女性の生き方は昔とは違うんだと改めて感じました。一人でも自立して生きられる生き方を学ばなければならない。今は苦しかったり自立するのに大変なことがあるけれど、それでも将来の自分のために、豊かに過ごせるような生き方を恵泉で学びたいと思いました。
  • 社会で活躍するために自信をもって勉強しようと思いました。恵泉には素敵な学生が多くいます。私もおかれた場所でなくてはならない人になれるように、礼儀もあり誠実で素直な人になれる力を大学に身につけたいです。
  • 「常に努力する者は救われる」という言葉が私の中で強く響きました。高校時代からバイトをしてお金を稼ぐ大変さを経験して親の有難さを痛いほど知りました。大変な思いをし、幾度もくじけそうになりながら頑張ってきたからこそ、今がとても報われていると思えました。
  • 私は大学受験に失敗して恵泉に来ました。ですが、今とても充実しているし、恵泉に来て良かったと思っています。これからも、自分が考えていた場所でなくても、自分が置かれた場所で力を発揮したいです。
  • これからの将来のことを考えさせられました。少し不安になりました。でも、それ以上にわくわくしました。やはり将来のために自分自身を磨かなければいけないと思いました。磨きます。決めました。

3年生

  • 「変化はチャンスだ」。この言葉にとても勇気をもらった。今、私は3年生になってさまざまなことで変化している最中だ。CA(キャンパスアテンダント)の仕事では立場が代わり、責任や重圧が増した。だがこの言葉を聞いて、今の変化に対応・適応していけば自分の成長とCAの組織の成長につながるに違いないと感じた。
  • 日々、やらなければならないことの山を目の前にして、何のために自分は存在しているのかわからないことばかり。でも、だれかが見ている、だれかのためになっている、どんなことでも一生懸命取り組む気持ちを忘れずにいたい。最近思いもかけないとてもつらいことがあった。でも、人生には何がおこるかわからない。いつか思いもかけない幸せがおとずれることもある。過去も未来もすべて、自分が創る。いつまでも過去に縛られていたら何も始まらない。そんなことに気づかされた。

4年生

  • 今後も悩むことが非常に多いと思う。けれども何事も悩むことが一人前なんだ、悩まずに生きている人ほど危険なのではないだろうか。「太陽が照れば塵も輝く」と理事長は言われた。前向きになれる。もうあと半年余り、これだけ頑張ろうと思える女子大に来て、さらに良かったと卒業してからも思えるよう、一生懸命に何事にも取り組んでいきたい。
  • 最終学年を迎え、いよいよ社会人になるというプレッシャーの中でこの講義を受けて、大学の学びは何だろうと改めて考えました。恵泉教育のスローガン「汝の光を輝かせ」は、自分だけが輝くのではなく、組織のメンバーを大切にし、他の人を輝かせるというメンバー中心型のリーダーシップだと思う。正確性ではAIには勝てないかもしれないが、提案力や礼儀は人にしかできない特性。そういう特性を発揮できる女性になっていきたい。恵泉はそうした力をつけて社会に出ていくことができる恵まれた環境であると改めて思った。

大学生活が始まったばかりで、恵泉でのこれからの学生生活に目をきらきらさせている1年生。勉強やクラブ活動等でいろいろと変化が出てきて、かたや近づく就活等への不安も芽生え始めている3年生。就活中、ないしは就活もほほ目途がついて、社会に巣立つ期待と不安とをないまぜにしつつ、恵泉での学びを振り返る時間を持ち始めた4年生。
学年によって感想も微妙に異なります。しかし、学生たちの社会での活躍を深く思う理事長の言葉の一つひとつが学生たちの心に確かに届いたようです。
理事長はレポートに質問を綴った学生たちへの返事を今、準備しているとのことです。直接回答をもらった学生たちの喜びの顔が想像されます。