絵本『ICAN』が刊行されました

2025年10月27日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

10月に入ってノーベル賞のニュースが次々と流れてきました。昨年の「ノーベル平和賞」に続いて、今年は2人の日本人が「ノーベル生理学・医学賞」と「ノーベル化学賞」を受賞されて、嬉しい秋です。
ノーベル平和賞といえば、2017年にICAN(「核兵器廃絶国際キャンペーン」が受賞されました。ICANの国際運営委員を務める川崎哲先生が本学大学院講師を務めてくださっていた関係で、お祝い、ならびに被爆者の方々が授賞式に参加できるようにと応援のときを持たせていただきました。 ノーベル平和賞受賞 川崎哲先生を応援しよう ノーベル平和賞募金の報告

このことを機に、ICANからバラの苗が本学に恵贈されましたので、それを恵泉の中高と本学が所在する多摩市にもお福分けいたしました。
新作のバラ' ICAN'を多摩市に贈呈 この ICANのバラは、やがて淡いピンクの花びらが、ふんわりした樹型になって仲間と共感し合うように次々と房咲きするのが特徴とのことで、多くの人がこの花を目にして、平和への思いを新たにしてほしいとの願いがこめられていました。

この度、そのICANのバラの絵本 『ICAN 希望の花の物語』が刊行されました。

"むかし、大きなせんそうがありました。せかいじゅうで、国と国があらそい、たくさんの人がなくなりました。ばくだんをおとされた国に、ひとりの少年がいました。おそろしい炎にやかれた町。にげまどった思い出。おにいさんもおとうとも、でかけた日からもどってきません。せんそうがおわっても、心はおもく、しずんだままでした。
ある日、少年はいままでみたことのない、うつくしい花に出会いました。近所にひっこしてきたおじいさんが、たいせつにそだてていたはちうえをわけてくれたのです。やさしいひかりをあつめたようにさく、いちりんのばら。その花は、少年の心にも、あかりをともしました。・・・・

巣山ひろみ 原作
種蒔友 編集/文
おおうちあす華 絵

以下、この絵本の刊行に携わった「恵泉女学園 花と平和のミュージアム」の土屋昌子さんの「刊行に寄せて」です。ひとりでも多くの方にお読みいただくことを願って、ここに紹介させていただきます。

絵本『ICAN』の刊行によせて

ICANの絵本ができました。この本のタイトル『ICAN』はバラの名前です。その由来は絵本をお読みください。恵泉とのかかわりは、その新しいバラの苗がICAN国際平和委員の川崎哲(かわさき あきら)先生(ピースボート共同代表)から恵泉に贈られたことから始まりました。ICANという団体の名称を自分が作出したバラの名前として使うことを許諾されたお礼に、50本ものバラの苗がピースボートに届けられた時、どのように育て、広めていったらよいだろう、と考えた川崎先生は、大学院の平和学専攻の講師をされていた恵泉が、園芸を教育の3本柱の一つにしていることを思い出され、この一人の被爆者の願いのこもったバラの苗を、引き受けてもらえないかと相談されたのです。

恵泉では、ICANがノーベル平和賞を受賞したとき、中高、大学、卒業生、教職員も協力して被爆者の方々の渡航費を献金した関係もありました。そのような人と人のつながりの中で、平和への願いが紡がれています。
2017年に生まれたバラが2019年に恵泉に届けられ、翌2020年5月、可憐な花を咲かせました。コロナの蔓延が始まりふさがれていた心にも、大きな慰めとなりました。中学・高校の庭で、また大学で、そして多摩市にも寄贈され、花を咲かせています。中学・高等学校のHP校長ブログで、本山早苗先生もこのお話を取り上げてくださっています。

このたび、ペンネーム種蒔友さんが、この物語の絵本を出版されました。構想から数年かけての刊行になりました。恵泉の教育のスピリットに深く共感され、敬意をもっておられます。

最後になりましたが、『ICAN』の刊行に際しご協力いただき、また恵泉女学園「花と平和のミュージアム」を覚えて、お祈りいただいておりますことに心より感謝申し上げます。引き続き、ご支援、ご協力をいただきますよう心よりお願い申し上げます。 絵本の詳細はこちら

恵泉女学園花と平和のミュージアム  (担当)土屋昌子