成人の日を迎えられた皆様へ

2023年01月09日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

今日は成人の日。皆様、いかがお迎えでしょうか?
昨年の成人の日をお祝いするこのブログを、私は「この2年近く、先が見えない暮らしの非情さと不条理を思い知らされています」と書き出しました。今年もまた、冒頭の「2年近く」を「3年余り」と書き換えて、同じ言葉を続けなくてはなりません。しかし、そうした中、しなやかに日々を乗り越える若い皆様の姿をキャンパスで見ることができることに何よりの嬉しさと大きな希望をいただいています。
困難な中にあればこそ、希望の光がいっそう輝いて見えることを思います。

昨年末、宇宙飛行士の毛利衛氏から1通のメールをいただきました。宇宙ステーションに滞在する若田光一氏のもとに、小澤征爾氏が指揮する斎藤記念オーケストラ(SKO*)の生演奏をJAXA (宇宙航空研究開発機構)との共同企画で届けたことを知らせて下さったメールでした。

小澤征爾さんが宇宙へ斎藤記念オーケストラ(SKO)の生演奏を届けたいという夢をJAXAとの協力でかなえることができました。
今年は私の宇宙ミッション"ふわっと92"から30年ですが、同じく30周年を迎えた小澤征爾さんの松本音楽フェスティバル側から宇宙へオーケストラ生演奏を贈りたいという提案が奇しくもありました。もうすでに指揮はご無理な体ですが、これに夢をかける感じでした。演奏が始まると手が不自由で動かせないはずなのに自然と腕を動かし始め、周囲が皆驚き、素晴らしく本当に感動しました。
ご覧いただければ幸いです。12月1日世界同時発信されました。URLは以下にお示しします。
小澤征爾/SKO がJAXA (宇宙航空研究開発機構) 「ONE EARTH MISSION - Unite with Music (⾳楽でひとつに)」

斎藤記念オーケストラ(SKO)は音楽教育者として著名な斎藤秀雄氏の弟子である指揮者の小澤征爾氏と秋山和慶氏の呼びかけで結成。斎藤氏の教えを受け世界各地で活躍している音楽家100余名が日本に集まり、1992年から長野県松本市で毎年夏に開催して、昨年で30年を迎えています。詳細はこちらをご覧ください。

毛利氏は、アメリカのスペースシャトル計画に日本人として初めて参加された宇宙飛行士です。
「宇宙からは国境は見えなかった」。宇宙から帰還した直後のテレビカメラの前で言われた毛利氏の言葉の重みが今、改めて思い出されます。

宇宙に人間が行って無事に帰還すること、それ自体が大きな感動でしたが、以来、30年を経た今日、宇宙ステーションが構築され、若田氏はじめ多くの方々が長期滞在ミッションをこなしています。
そして、その宇宙ステーションに地上からSKOの生演奏が届けられるほどに技術が発展したことに、30年という月日の重みが感じられます。

今、「人生100年時代」と言われています。本日、成人の日を迎えられた皆様のゆく手にはとても長い時間と、その間に達成されるであろう大きな可能性にみちた世界が拡がっています。
最後に、哲学者鷲田清一氏の「ここにあるものをてがかりにここにないものをおもう」の言葉を贈ります(『想像のレッスン』ちくま文庫)。JAXAとSKOが30年の月日の間に紡ぎ、今、私たちの目の前に示してくれたものを思いながら、これからの皆様の前に開かれる未知の時間に豊かな「想像」をめぐらしていただければと思います。

成人の日、おめでとうございます。