授業を通して見える学生の感性と切実な想い

2021年02月01日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

今日から2月「如月」に入りました。まだまだ厳しい寒さが続くので、"更に衣を重ね着する"という意味の「衣更着(きさらぎ)」が語源だという説が広く知られています。
一方で、中国では「如月」を「にょげつ」と読んで、"寒い冬が終わり、春に向かって万物が動き始める時期"という意味で使われているようです。

春とは名のみの寒さに震えながらも、その中に明るい陽射しを見ることもできるのがこの月でしょうか。今日はそんな2月にふさわしい話題をお届けいたします。

昨年の春に入学した1年生が、「表現力実践講座(写真と文章)」(桃井和馬先生)*でさまざまな思いを表現していますが、その中の一人の学生の作品です。

今の私~写真で伝える 2020~ 国際社会学科1年 山崎瑞季

  • キャンパスライフとは・・・こんなはずじゃなかった大学生活
    二年生こそはキラキラした日々を
  • 恋しい密 同じ時・場所・声 すべてを共有できた日々
    はやくあなたの笑顔を隣でみたい
  • 甘い甘い 本当にこれでいいと思ってるのか?
    こんな対策じゃ 世界から笑われる もっともっと厳しい対策を
  • 希望の光 どうか安全なワクチンであってくれ
    明るい未来は全てお前にかかっている
  • 祭りが消えて 街から人が消えた 笑顔が消えた
    まだ取り戻せる だって命だけは残ってるから
  • 女性が輝く時代に アメリカに思いを託す 平等な社会
    そんな世界を夢みて
  • 帰りたい 親元を離れて知った偉大な存在
    今の私なら言える ありがとう

作品は1枚1枚、和紙に毛筆で描かれています。
写真をクリックすると、拡大されます。

キャンパスライフがこんなはずではなかったという言葉にまず胸を突かれます。
共にある時と場所を奪われて、余計に募らせる友への思いに、さらに胸が痛みます。
コロナ禍対策への批判の言葉と共にワクチンに託す希望に、若い感性をみる思いです。
さまざまなものを奪われる日々の中で、しかし、目を世界に転じて女性活躍に胸ときめかせ、命を恵まれていることに、何よりも親への感謝の言葉が綴られています。

未曽有の苦しさと厳しさにもめげず、希望をもって立ち向かおうとしている若い学生一人ひとりに、大学は何ができるのか、何をすべきか、できうる限りのことで応えていきたいと思います。

*「表現力実践講座」について 桃井和馬(国際関係・メディア論)

写真と短い文章で、「情報」や「思い」をどのように印象的に伝えるのか?
「表現力実践講座」は写真と文章表現の上達を目的にした授業です。しかし、それだけではありません。表現を通し、自分を見つめ、社会と向き合うのです。

 

今学期のテーマは「2020年 秋~冬」で、毎回の授業では文章を付けた写真をgoogle classroomに投稿してもらいました。それに対し、担当教員が文章の添削、写真の撮り方を伝えながら、ひとつの作品に仕上げていくのです。
良い作品に与えられるのが架空の「座布団」で、これを15枚貯めることがひとつのクリア目標で、特に優れた作品には「座布団2枚!」、また極稀に「座布団3枚!」が出ることもありました。学期末には作品をアルバムにして提出してもらいました。アルバムの素材、作り方はすべて自由ですから、市販の一般的なアルバムでまとめられた作品もありますが、『団扇』の上に写真と文章を貼り付けたアルバム、『自分で編み上げたセーター』に写真を貼り付けたアルバムや、『餅焼き網』で作成したアルバムもあったのです。
座布団を獲得するのは簡単ではありませんから、秋学期中ずっと受講学生は、身の回りのものから、写真になりそうなものを探し続け、文章を書き、何度も投稿を続けました。 その中で、写真を撮り、文章を書くこととは、対象となるモノや出来事をしっかり見つめ、あらゆる角度からそれについて考察することで、それこそが、解なき問いの答えを探る旅、『学問』と『芸術』の基本であることを体感したのです。