オンラインが結ぶ卒業生の輪

2020年11月09日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

今年もあと2か月弱となりました。改めて今年の手帳を開いてみると、春先から夏にかけて、さまざまな行事や会合の予定が軒並みキャンセルになっています。二重線で消された文字の背後から、予想外のコロナ禍に見舞われた戸惑いと不安が浮かび上ってきますが、秋を迎えた頁には徐々に新しい予定が埋まり始めています。ただ、スケジュールが随分と様変わりしています。開催場所がかなり離れている会合に続けて出席したり、移動時間を考えると躊躇したりするような早朝や夜間の会合への参加予定も入っています。
理由はオンラインでの会合が増えているからです。

コロナ禍が早く収まって、対面での会合が一日も早く戻ってきてほしいと願いつつ、オンラインの良さも捨て難いものがあると思っておりましたら、次のようなメールがとどきました。

"本日10月24日(土)の夜9時から10時過ぎまで、「卒業生オンラインサロン☆エンジェルカフェ☆」を開催いたしました"

メールの送信者は岩佐玲子先生(教育学)です。
「卒業生オンラインサロン♡エンジェルカフェ♡」の母体は、2017年の恵泉祭に集まった岩佐ゼミの卒業生の発案で開設されたLINEグループ。当初は15名ほどが、現在は1期生から昨年度の卒業生までの50名に。住まいも北は北海道から南は九州と広範囲にわたって、大学の様子や互いの近況報告等を交わしあっていたLINEグループですが、オンラインサロンへと展開したきっかけはこの春先からの新型コロナの影響だったとのことでした。

「人助けと思って、オンラインエンジェルカフェにZOOMで参加していただけないでしょうか。
今夜9時からお付き合いください!お願いします!」
大学の授業が5月11日からZOOMで行われることになり、学内講習を重ねて受講して準備にあたっていた岩佐先生ですが、実際の授業がうまくできるかどうか不安で、卒業生に協力を呼び掛けたとのことでした。

以下、岩佐先生の報告です。

早速「行きます!」との返信があって、当日朝の呼びかけにもかかわらず、夜9時には1期生2名をはじめとする6名の方がZOOMに入ってくださり、私の授業のための練習にお付き合いくださいました。
「楽しかったので、またオンラインサロン開いて下さい」「定期的に、テーマを決めたりしてはどうでしょうか」などの声が寄せられて、以来、毎月第二、第四土曜日の夜9時から開催して、すでに10回余りとなります。子どもを寝かしつけてから、あるいは1週間の仕事を終えて参加してくれている卒業生たち。時々、小学生のお子さんがママと一緒に顔を出しながらお気に入りのぬいぐるみを見せてくれたり、「ちょっと授乳してきます」と画面から出られたりと、それぞれの家庭の様子を共有しながら、おすすめの本や料理、便利な家電品の紹介をしたり、社会復帰への応援や求人情報も交換しあっています。

自粛生活でステイホームを余儀なくされ、人と話したり出会ったりすることが叶わなくなる中、テレワークの負担にも頭を悩ましていた卒業生も少なくなかったことでしょう。
お互いに情報交換したり、助け合ったり励まし合ったりできる場は、どんなに貴重なことでしょうか。
母校の女子校で家庭科のアシスタントをされていた4人のお子さんのママである卒業生が、このサロンの仲間から背中をおしてもらって、家庭科の教員免許取得を目指して他大学に編入学の申し込みをし、この10月から勉強を始めたという話。3人の幼児を育てている30代の卒業生は昨年転居のために15年務めた会社を退職して、新しい土地で知り合いができず、社会復帰もなかなかできないという状況でしたが、サロンで上級生の方からの励ましを得て行動を開始して、この9月から埼玉県の特別支援学校でスクールサポーターの仕事を始められたとか。

また10月24日のサロンでは、今年、本学に着任された丸橋亮子先生(保育学)も参加して、私が代表理事を務めているNPO法人あい・ぽーとステーション主催の「子育て支援員」研修(オンライン)について説明をしてくださったところ、参加された卒業生が受講に向けて大変興味を示されたとのことです。

このコロナ禍にめげず、しっかり前を向いて自身の人生を切り開いていこうという意欲に充ちた卒業生たちの近況でした。まさに「生涯就業力」を磨き続けようとしている卒業生たちにとって、「卒業生オンラインサロン☆エンジェルカフェ☆」が大変貴重な場となっていることを、とても嬉しく思います。

「卒業生オンラインサロン☆エンジェルカフェ☆」に参加された卒業生たち
上段左端が岩佐玲子先生・下段右が丸橋亮子先生です。