秋の国際シンポジウム(恵泉×梨花)決定

2018年07月09日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

スプリングフェスティバルで開催した国際シンポジウムPART3(恵泉×梨花)について、6月4日のこの「学長の部屋」でご報告いたしました。

その最後に嬉しいご案内として、この秋に梨花女子大の現職総長をお迎えしてシンポジウムを開催する予定であると書きましたが、日程と内容等がほぼ確定いたしましたので、ご案内いたします。

恵泉女学園大学と梨花女子大学の協定締結記念日韓国際シンポジウム

「恵泉×梨花:女性活躍時代の新しいリーダーシップとは

シンポジウム開催の趣旨

女性活躍が声高に叫ばれている昨今、これからの時代に必要な真の女性活躍の姿とはどのようなものなのか?男性的原理で構築された競争社会に分け入り、そこで生き抜くリーダー像だけで良いのか?
これまで韓国の梨花女子大学と恵泉女学園大学は、日韓のみならず広くアジア全般に視野を置きながら、女性が置かれている共通課題に目を向け、そこで果たすべき女子大学の使命と課題について議論を続けてきました。
その結果、両大学はこれからの時代に必要な新しい女性活躍の姿とそこで発揮されるべきリーダーシップについて共同実践するために協定を締結することとなりました。
その記念シンポジウムを下記の通り開催いたします。国境を越えてアジアに生きる女性に必要な高等教育のあり方、国際的な協力及び役割について共に考えたいと思います。主催 学校法人恵泉女学園・恵泉女学園大学

日時 2018年10月20日(土)10時~16時
  • 基調講演1 恵泉女学園大学学長 大日向雅美
  • 基調講演2 梨花女子大学 総長 金恵淑

基調講演に先立って分科会での討議

  • セクション① 園芸から学ぶ分かち合い
  • セクション② 平和を構築するリーダーシップ
  • セクション③ 高大連携で育成する生涯就業力

さらに詳しい情報は追ってご案内いたします。

なお、先日の国際シンポジウムPART3の参加者のアンケートとそこに記されていたご質問について登壇者【李明宣教授】からいただいた回答は次の通りです。

アンケート感想

一般参加者(抜粋)

  • 変化の主体になるのは女性であるという格言には力強さを感じ、女性である自分自身も、そして女性を教育する立場としてもパワーを頂戴できました。ありがとうございます。(40代 短大教員)
  • 「なぜ女子大か?」を卒業生としても考えるよい機会となりました。皆さま、ありがとうございました。(一般 40代)
  • 久しぶりにこういった色んな方の話を聞くことができ、勉強になりました。恵泉を卒業し、社会に出ていますが、時々こういった機会を持つことがこれからもできたらよいと思います。改めて、恵泉を卒業したことを誇りに思えました。(卒業生 20代)
  • ジェンダーギャップ指数の大きい日本と韓国が協力してアジアの女性進出を目指すのは心強いと思った。(学生 20代)
  • 「女性の生き方」を紐とくと、平和な世界の構築に行き当たると感じた。(学生 20代)
  • フェミニズムのあり方について再度認識することができました。一人ひとりの女性の力が、今未来を大きく変えていくので、私もその一員になりたいと思います。(学生 20代)
  • 貴重なお話を伺いました。(一般 70代)
  • 知らないことが一杯有り、勉強になりました。(一般 50代)
  • 大変刺激を受けました。(一般 70代)
  • 日本の女子大×韓国の女子大という二校によるこういったお話は貴重、かつとても為になるものでした。女性は自信を持ち、生き生きと生きていくべきだと思いました。自分の主張はちゃんとしていく。「小さくても変化をつくれば大きくなれる」。バタフライ効果で、これからの社会で女性の力を更に強め、活躍していきたいと思いました。(10代)
  • 女性たちのこれからの課題、問題が何か改めて知ることができてよかった。(20代)

本学学生(抜粋)

  • 自分が女性としてどう生きようか、とても考えさせられました。(10代)
  • 男女共学の大学が増えていく中で、梨花女子大は女子校の必要性として、数値だの平等ではなく、社会での実質的な平等のために女子大は必要であると示していた。また新たな価値観として、分かち合いのリーダーシップを大切にしており、知識や資源を共有し、分かち合う価値を学び実践するための教育を目指しているのは、どの大学にも大切で必要なものであると感じました。(20代)
  • 女子大のこれからの在り方について、改めて考えることができました。(20代)
  • 女性が一人の人間として社会で生きていくために、平和を考えながら生きていくのが今後大事なのだと改めて思った。(10代)
  • 日本の中にいると、世界と比べて女性の立場が低いと言うことに気付きづらいと思うので、こういった国際的な視点の話を聞くことができて新鮮でした。(10代)
  • とても興味深いお話でした。女性の生き方についてよく考えさせられました。(10代)
  • 私の母は私立の中高一貫校の非常勤講師をしています。毎日常勤の人より授業があるのに、お給料は常勤の半分もありません。父は 4年前に亡くなりました。父が居た時は、私の家は割と裕福な家でしたが、父が亡くなってからは本当に大変な暮らしをしています。私はこの一変した暮らしに疑問と不安があります。このシンポジウムに参加して、少し私のおかれた社会が見えたように思えました。(10代)
  • 女子教育の在り方についてなど聴けてよかったです。(20代)
  • 普段なら聴くことのないお話を聴けてよかったと思います。女子大の衰退が言われている今、これ以上女性が生きづらい社会にならなければいいです。ここでは共学で学べないこともたくさんあるから。(10代)
  • 女子大が必要な理由について今回の話を聞いて初めて考えました。昔の女子大はお嬢さまといったイメージがありましたけど、イメージが変わりました。(10代)
  • 今回のシンポジウムを通じて今までの女性の理想像とは違う新しい理想像を創り出していく必要があると思いました。(10代)
  • とても熱いお話を聞きました。いろんな話を聞いても、自分で動いて実践してみないと意味がないと思いました。(10代)
  • 韓国の梨花女子大学の方と恵泉女学園大学は、国は違えど、女性が力強く、しなやかにいきるために何が必要か、知ることができました。(20代)
  • 私は今4年生なのですが、4年間恵泉で学んだことについて考えさせられました。女子大学は女性の在り方を考えつつ、弱者とともに分かち合うことを必要とされているという考えにはハッとさせられました。男女平等の在り方、女性として社会との暮らし方を考えさせられました。
  • 私は中学、高校、大学とずっと女子校で学んできました。男性がいない分、のびのびと、時に主体的に学びを深めてきたつもりです。大学 4 年生になり、来年から社会に出る身になり、男性中心の考えがまだまだ残る場に出ることに大きな不安を抱いていました。しかし、本日お話を伺い、女性でも大きな可能性が有り、しなやかに、強(したた)かに生きることが重要であると励まされたような気持ちになりました。貴重なお話、ありがとうございました。
  • 今後の女性の生き方について、様々な活動をされている方々の話を聞くことができて、大変勉強になりました。ありがとうございました。

参加者の方からのご質問への回答(李明宣教授より)

梨花女子大の先生から見て、日本はどう見えるか、日本の女性はどう見えるかを知りたい。(一般 40代)
個人的に日本についての理解や知識が深くないため、マスコミや表面的にみられる日本の女性に対する抽象的なイメージを持っているという点はご了承ください。マスコミにみられる日本の女性たちは礼儀正しく、他人に気を遣う面などから、多少個人的というイメージを持っています。 同時に、市民社会や共同体に対する理解が深く、小さいことでも関心があることや、社会的な課題に対しては深い理解と知識をもち、特別な名誉や代償がなくとも黙々と参加する傾向があると思います。
しかし、現実における実際の女性たちは年齢、階層、地域、職業、家族背景など多くの要因による多様なギャップを持っているため、イメージで日本の女性を判断したり、集団として日本女性を一般化し、話すことは適切ではないと思っています。
アジア、アフリカでは未だになぜ「純潔」が重んじられているのでしょうか。現代ではさまざまな避妊具が発達しているのに。デリケートな質問で申しわけありません。(一般 40代)
アジア・アフリカの場合、一般化して語ることは適切ではないですが、相対的に、いまだ家父長的な伝統的習慣や地域文化、宗教の影響を強く受けているということができます。特に、一部の地域において、幼い少女を結婚させる早婚や児童結婚、売買婚などが続いていて、これは伝統的に女性を家族の財産の一部とみなす家父長制度下の習慣や、貧困、女性の性に対する統制などの文化や制度と関連しています。一部地域では、女性が性暴力をうけたり、家長が認めない男性と恋愛や結婚をした場合、家族や親戚の男性による「名誉殺人」が行われたり、テロに遭うことは現在でも時折報道されています。つまり女性を一人の人間として尊重しない家父長的社会で、女性の純潔は、男性が統制しなければならない所有物としてみなされていることが問題です。このような側面はアジア、アフリカだけでなく、形は異なりますが、ヨーロッパ社会や日本、韓国などにも存在している問題です。
また避妊器具の発達と純潔の問題は少々次元の異なる問題です。現代社会で避妊器具は多く発達してきましたが、そのような避妊器具を全世界の人々が、制約なく使用できる状況ではないと思います。つまり、避妊の使用は単に器具の技術的な発達だけでなく、それを購入することができる経済的な権利、そして男性と女性の相互的な平等性と性的自律権など、様々な要因が結びついている問題です。
韓国の方たちはたいへん積極的、活動的でいらっしゃるという印象を持ちます。若い女性たちが、どのように今日のテーマを自覚しておられるのか、知りたいと考えました。 (一般 70代)
女子大学の起源をさかのぼると、近代社会で女性に対する教育が禁止されたり、男女の同席を禁止した時代に、女性を教育する空間として誕生しました。しかし現代社会になって性の平等が拡大されているのに、なぜいまだに女子大学が必要なのかという社会的、個人的な疑問が投げかけられたりします。私が所属する梨花女子大でも、恵泉女学園大学と同様に、学生たちは自分自身の教育経験を通して、女性たちのエンパワーメントとリーダーシップを育てるのに女子大学という空間が非常に重要な空間だと自覚するようになると言っています。特に女性の空間で学生たちは自分の意見を表明し、主導的にものを進め、行事を担いながらリーダーになる経験をします。要するに「女性的な女性」でなく、「人間として独立した女性」という訓練とアイデンティティーを学ぶ経験だと言えるでしょう。このような保護された空間、暮らしから、社会という「ジャングル」に出たときにさらに苦しい経験をするのではないのか、という指摘もありますが、このようなエンパワーメント教育を受けないままジャングルに出るほうがもっと危険だと言えます。
今回のシンポジウムのテーマは、梨花女子大学でも1970年代以降、常に重要なアジェンダとして話されてきて、女性学術大会の主なテーマでもありました。平等社会と言われていますが、社会は未だ男性中心的で女性に対する差別と多くのタブーが存在していることは事実です。このような現実から、平等、平和、生命、分ち合いの価値を目指す梨花女子大学と恵泉女学園大学のような女性高等教育機関は依然として意味があり、重要な女性教育の空間であると思います。

(以上 翻訳:中村桃子 大学院平和学研究科修士課程)

梨花女子大学WEBサイト

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