大人になる道は1本ではない!

2022年10月24日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

秋たけなわとなりました。いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
先々週の土曜日(10月15日)、つくば市立桜総合体育館で開催された「不登校・多様な学び つながる"縁"日」にうかがってきました。つくば市市民活動課「アイラブつくばまちづくり」の支援事業(事業協力:教育委員会 学び推進課)ですが、その企画の中の1つとしての講演に招かれてのことです。

私をお招きくださったのは、「不登校・多様な学びネットワーク茨城 つくばエリア」の皆様でした。
企画の趣旨は

"不登校に関する様々な情報を得ていただき、「一人じゃないんだ」「自分たちだけじゃないんだ」という孤立感を軽減していただくこと、あわせて学校外で過ごす子どもたちがやりたいことを実現する場を作ること"

ですが、必ずしも不登校の子どもやご家族だけでなく、よりひろい観点からの子育てについての話を、とのご要請で、講演 『親も子もあるがままの"私"を見つめて 未来を拓く』をお引き受けした次第です。

当日の屋外では、つくばの豊かな自然を生かして、プレイパークや雑木林で遊ぶ会等々が催されていて、子どもたちが身体いっぱい楽しそうに遊ぶ姿がみられました。会場内には、フリースクールや通信制の学校関係の方々、不登校の親の会、成長発達の過程で困難さを抱えている子どもや親を支援する各種団体や相談機関、つくば市教育相談センター等々、子どもの育ちと親の子育てを共に支えあおうとする30の参加団体の展示とブースが所狭しと設置されて、まさに市をあげて子どもへの愛(ラブ)が溢れている空間でした。

当日のチラシです

今、子どもたちが育つ環境は厳しさを増しています。"一人ひとりの個性を大切に" "自分らしくのびやかに"との呼びかけはあちこちでなされていますが、その言葉が虚しくなるほどに、学校ではいじめが横行し、偏差値で競争をあおり、無用な校則で子どもを縛る傾向は消えていません。子どもたちが生きづらさを覚えるのはむしろ自然ではないかと思えてなりません。その子どもたち一人ひとりがもっているかけがえのなさをどのように守り、育んでいったらよいのか・・・、学校への行きづらさに悩んだ日々が少なくなかった私自身の子ども時代を思い出しても、胸の痛みと共に焦燥感が募る思いで、つくばにうかがいました。不登校をはじめとしてさまざまな生きづらさに悩む子どもと共に生きながら、わが子のあるがままを受け入れようと懸命に努めつつ、他方でそれが必ずしも簡単ではないという複雑な思いに苦悩する親御さんの胸の内を思いながらお話をさせていただきましたが、ハンカチで涙をぬぐう姿があちこちでみられ、いつにも増して緊張の思いでした。

でも、この日のつくば市立桜総合体育館は、そんな私の心を本当に温かくいやし、励ましてくれる場でもありました。さまざまな課題に直面している子どもとその親をみんなで支えたいという人々の願いと温かさに溢れていたからです。誰にも相談できずに苦しんだ経験から立ち上がったという主催者とその思いに共鳴した多くの人々のネットワークがたしかな"縁"を結んでいる光景が広い体育館内の隅々に行き渡っていました。

こういうたしかな"縁"に包まれて育つ子どもたちには、必ず明るい未来が拓かれる。自分で自分らしく拓く力を育んでくれる、ことを信じたいと思います。
本学でも、近年、通信制高校からの入学者が増えていますが、以前、ゼミで担当した学生もその一人でした。中学時代に不登校になったのですが、ご家族の支えと通信制高校の先生方の温かなご指導で本学に入学することができ、私のゼミで卒論を書きました。自身の関心を真摯に追求する誠実さと洞察力の深さに感銘を覚え、最優秀のAAの評価をつけたことが思い出されました。

大人になる道はけっして一本ではない!その子にふさわしい道を歩んでほしい、歩ませてあげることが、今、私たち大人に科せられた課題であることを、改めて胸に刻みながら、つくばからの帰路に着きました。

講演会の様子です

館内でのブースや展示コーナーの様子です 主催者の方より
会場では、感染症対策としてマスク着用や消毒をお願いすると共に、マスクが辛い方へのご理解をお願いしました。

屋外で遊ぶ親子たちです

主催者の方々とご一緒に記念の写真を撮っていただきました
恵泉の大先輩が駆けつけてくださり、"講演お疲れ様"と、のど飴をプレゼントしてくださいました
高校12期 短大11期の佐藤由禧子さんです