オンライン授業スタートして1週間

2020年05月18日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

先週の5月11日からオンライン授業が始まって、1週間になります。
初日はいくつかのトラブルもありましたが、その後は順調に進んでいるようでほっとしております。

ここに至るまでを振り返ってみると、まさに怒涛のようなひと月半でした。
新型コロナウィルス感染の拡大が日本でも懸念される中、何とか卒業式は規模や形を変えて実施することができましたが、4月以降のことがまったく不透明でした。当初は入学式や授業開始の延期案もありましたが、やがて感染拡大の深刻化と共に全面的な休校措置を取らざるをえなくなり、春学期の教育・大学運営全般にわたってオンライン化が求められました。
いずれオンライン授業等の導入の必要性はもちろん承知はしておりましたが、"いずれ"と思っていたことが、緊急1か月半以内での対応が求められた時には、やるべき作業量の膨大さに正直立ち尽くす思いでした。

しかし、そこから「学長室」を中心に、教職員が一丸となって、目を見張るような動きが始まりました。
在学生と新入生のすべてに対して、インターネット環境を一人ひとり丁寧に聞き取りをし、オンライン授業への対応が難しい学生には大学がPCの貸出しにあたりました。外出自粛要請下での学生たちの心身の不安、わけても入学式も執り行えないまま過ぎていく新入生の不安は何よりも気がかりでしたが、ゼミ教員や事務職員が総力あげて連絡をとりあいました。「〇〇学科の学生と全員連絡がつきました」「学籍番号〇△の学生との連絡がつかないので、引き続き心がけます」等のメールが連日のように飛び交いました。新入生には授業開始前に学科別のオンライン・フェローシップを行うこともできました。

そうして迎えたオンライン授業の初日、1通のメールが私の目にとまりました。

◇◇様
〇〇先生からご連絡を受けて、あなたが機器の故障で音声だけで授業を受けることになったと伺いました。その状態でこれから授業を受けていくことを考えますとご不便かと思います。
取り急ぎ大学からのPC貸出対応をさせていただければ、とご連絡いたしました。
★一度大学に来ていただき、手続きをお願いすることになります。
今後の大学生活の中でも必要になってきますので、パソコンはいずれご準備いただきたいとは思いますが、大学のほうで当面の必要についてご相談・対応させていただればと思います。
今日は一日ずっと授業が入っておられるようですので、授業後にでもご連絡ください。
どうぞよろしくお願いいたします。 学生課

学生課から一人の学生に向けて送られたメールでした。授業開始当日で、事務局はひっくりかえるような忙しさでしたが、誰一人として取り残さないという気迫と優しさに満ちた事務局職員の細やかな対応には、ただただ感謝の思いでした。

オンライン授業スタートで戸惑っているのは学生だけではありません。むしろ教員の方が不慣れなことが少なくありません。
この点についても、いち早く学内にオンライン授業テクニカルサポート・教員タスクフォースWG(略称OTT)が立ち上がり、機器対応技術に習熟している教員が講師となった講習会がいくつも開催されました。さらに先週1週間はこのOTTと事務局の方が自分の業務の調整をはかりつつ、可能な限りの時間のすべてを投入して、各教員のオンライン授業のサポートに対応してくれました。

今回のコロナ問題は、突然襲ってきた予測不可能な危機でしたが、それをGOOD CRISISに変えることができたことは、日ごろからきめ細やかな対応で教育の質保障をめざしてきた教職員が、コロナ対策に一丸となって挑戦した成果にほかなりません。
オンラインのZOOM画面ではありましたが、久しぶりに学生たちに出会えた喜びはひとしおです。教員の問いかけに、即座にうなずき、躊躇なく意見を返してくれる学生たちの真剣な学びの姿勢と笑顔には、この間の労苦を忘れさせてくれるものがあります。
この先、まだまだ先の見えない不安が続きます。学生の学びの保障に向けて、一層、努力を続けてまいります。

最後にもう一つ、嬉しいニュースです。
先にこのブログで、広島県在住の被爆者でバラの育種家・田頭数蔵さん(90)が新しく創られたバラ、ICANの苗木を本学と多摩市にご寄贈くださったことをご報告いたしました。2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)にちなんで名づけられたバラです。

そのバラが見事に花開きました。この企画に関わった一人、上村英明先生から送られてきた写真とメッセージです。

オールドローズのようなバラで、とてもよい香りがします。有機栽培なので、蕾もおいしいらしく虫に食べられているものがあり、また葉も病気がある程度出ています。しかし、ふっくらした花びらの中でまどろんでいる虫たちをみると、これも恵泉らしいのかもしれません。蕾はまだたくさんあり、楽しみです。温室の入口の反対側の壁に沿って鉢に植えられたバラの見学に足を運んでいただければ幸いです。

贈られてきたときは苗木でした(2月17日 多摩市に寄贈したときの写真です)
新作のバラ' ICAN'を多摩市に贈呈

緊急事態宣言が延長されて重苦しさが漂う昨今ですが、少しでもこのバラの美しさに心を癒していただけたらと願って、ここにお届けいたします。