入学式式辞 真の女性リーダーと恵泉スピリット

2018年04月09日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

新入生の皆様、学部、そして、大学院のご入学、おめでとうございます。皆様のご入学を教職員一同、心からお待ちしておりました。
ご列席のご両親・ご家族の皆さまにおかれましても、お嬢様のご入学をどんなにかお慶びのことと、お祝いを申し上げます。

さて、新入生の皆様、今日の日をよくお迎えになられました。
ここに至るまで一生懸命に頑張っていらしたことと思います。ときに思うようにならないことに涙を流したり苦しんだり、あるときは喜びに胸ときめかせた日もあったことでしょう。そうした日の一つひとつを大切に重ねていらした、そのすべてが今日のご自身につながっています。

そして、今日の日がさらに新たなご自分と出会うスタートの日です。
恵泉女学園大学・大学院は若い女性の皆様がこれからの人生を自分らしく切り拓き、いつ、どこにあっても、しなやかに、凛として生きていく力を育んでいただくためにある女子大です。

最近、女性活躍という言葉をよくお聞きになるかと思います。まさに皆様は女性として真に活躍する時に遭遇しています。

もっとも、私は人が社会の中で生きていくうえで、女性・男性という性別を厳密にすることには基本的に賛成ではありません。女性・男性を超えた人としてのあり方が尊重されるべきだと考えております。

それでいて、なぜ、あえて「真の女性活躍」という言葉を使うのか、そこには2つの理由があります。

まず一つは、今、国をあげて言われている女性活躍にやや疑問があるからです。官庁や大手企業、あるいは政治の中枢等の社会の表舞台に立って活躍する女性に光が当てられています。
女性が決定権をもつポジションにつく意義が大きいことは確かですが、しかし、女性活躍として真に目指されるべきものは、ただ華やかな表舞台で決定権をもつ活躍だけとは限りません。

人生は地道なことの積み重ねです。大切な家族のため、地域のために、人を支え、また支えられて生きることの意義も忘れてはなりません。そうした経験の積み重ねが表舞台に立つチャンスをつかんだ時、周囲の方に細やかな思いやりを注ぎ、ご自身はもとより、周囲の方にも力を発揮してもらえる真のリーダーとなれると考えているからです。

2つ目の理由は、皆様が生きるこれからの時代の大きな社会変化を想定してのことです。日本は未曽有の少子高齢社会に突入し、かたやグローバル化のもと、激しい世界変動の影響下に置かれています。人生の中で幾度となく岐路に立たされ、その都度、柔軟に生き方を変えることが求められる時代が到来するわけですが、これは女性にとってチャンスです。これまでいろいろな壁に阻まれ、けっして単線的な人生を生きることの叶わなかった女性にとっては、そこで培ってきた力を発揮する時でもあるのです。

女性が真の活躍を手にするために、そして、想定不能な社会変化に遭遇する時代を迎えても、たゆまず、しなやかに生きる力を育んでいただくことが、女子の高等教育機関の役割と使命であると考えています。

そのために、本学は「生涯就業力」を恵泉ブランドとして掲げています。
卒業時点での「就職力」にとどまらず、生涯に亘って精神的・社会的・経済的な自立を目指し、身近な人に尽くし、社会のために生きることに喜びを見いだせる女性の育成を目指しております。

この「生涯就業力」の原点は、今から80年近く前に恵泉女学園を創立された河井道先生の理念にあります。
1929年、第一次世界大戦後の世界恐慌の最中にあって、真に平和な社会の構築に尽くすために、世界に心を開いた、自立した女性を育成することを目指したキリスト者河井道先生は、常々、次のように言われました。
「自分自身開拓者として道を明るく照らせる女性におなりなさい。まっすぐな狭い道、人が踏みならした道を行くことに満足してはならない。いかなる所にあっても、なくてはならぬ者として喜ばれる方におなりなさい」。

今日から恵泉女学園大学、そして大学院での皆様の新たな日々が始まります。
大学の学びはご自分でテーマを見つけ、それを深く追求する学問です。
さらに大学院では独自の研究へと高めていただく。
いずれも知を紡ぎ、知の喜びと力を深める場です。

どうかご自身の興味や関心、疑問を大切にしてください。
時間の許す限り、大学の図書館にも足を運んでください。古今東西のあらゆる分野の人間の営みの広さと深さに魅了され、圧倒されることでしょう。

また欧米・アジアの各地に出向き、語学研修だけでなく、現地の方々と生活を共にするプログラム、あるいは日本国内各地でNPO等の様々な活動に参加するプログラムもたくさんあります。国際的な経験や地域貢献活動を通して、異なる文化や歴史・生活習慣等に触れ、広い視野と違いを認めつつ相手を否定しない柔らかな心を身につけていただけたらと思います。

何よりも本学の教育の特徴は少人数教育です。
ただ人数が少ないだけではありません。安心して自分の意見を言い、他の異なる意見にも耳を傾ける心と態度を養いあう場として、少人数教育を大切にしています。

こうした恵泉での学びを通して、学生たちが自分自身の成長と変化を実感してこの学び舎を巣立っていっています。卒業生たちの言葉も私たち教職員が宝としているものです。
多摩キャンパス、そして、蓼科ガーデンに咲く花に触れたある卒業生がこんな言葉を残してくれました。「恵泉の花々は、どれも自分を主張しすぎない程度に、それでも主張していて、どれものびのびと、完璧に咲いていなくても、とても堂々と咲いているように見えた。この世に存在するもの全てに意味があることを感じた」。
これこそが、まさに恵泉スピリットです。そして、これからの時代を生きる女性が発揮すべき真のリーダーシップの要となるスピリットであると思います。

最後になりましたが、大切なお嬢様を本学にお預けくださいましたご両親様・ご家族の皆様に深く感謝を申し上げます。
恵泉女学園大学は小規模な大学ですが、そうであるからこそ一人ひとりを大切にした教育に努めさせていただいております。きめ細やかな教育とグローバル時代にふさわしい国際教育に注力していることで、内外から高い評価をいただいております。お嬢様が本学の学びを通してこれから女性として生きていくうえで必ずや大切な力を身につけていただけるよう教職員一同、力を尽くしますことを、また私自身、二人の娘の母として、皆様が今日までお嬢様を慈しみお育てになっていらしたお気持ちを我がこととして胸に刻み、そのご期待にお応えすべく、大切にお預かりさせていただきますことをお約束いたしまして、学長としての式辞を終えさせていただきます。

本日は本当におめでとうございます。