2021年度にお迎えした先生方を囲んで

2022年02月14日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

昨年4月、3人の新しい先生方・・・鈴木真子先生(生涯就業力)・生田裕二先生(英語教育・認知言語学)・越智健太郎先生(英語教授法・第二言語習得)・・・をお迎えいたしました。今年度を終えるにあたって、その先生方を学長室に招き、この1年を振り返るひと時をもちました。

――はじめに自己紹介をお願いできますか。

鈴木先生

大学を卒業後、放送局に勤務しております。人事部等を経て文化事業部にてコンサート・イベント企画などに18年間携わりました。その後CSR(社会貢献)部に移り、恵泉での教員活動と並行して、災害支援およびSDGsに関連した環境イベントなどを中心に活動しております。教育分野については以前から憧れがあったので、携わることができて嬉しく思っています。

生田先生

県立高校に30年間、勤務しました。異動も多く、学校によって校風も生徒たちの様子もそれぞれ違いが大きくありましたが、特にクラス担任としての経験は貴重でしたし、3年間を通して生徒たちの成長を見守れたことはかけがえのない喜びでした。大変なことも多かったですが、卒業式では涙・涙で、在学中は散々苦労させられた生徒たちから、卒業後は飲み会に誘われたり結婚式によばれたり。教育というのは、その場では悩んだり、苦しんだことでも、後になって「答え」が出てくるものがあることを痛感しています。

越智先生

小学校から高校までアメリカで育ちました。大学は法学部でしたが、英語の勉強のほうが面白くなって、卒業後は英語教師として私立の中高一貫校に4年間勤務しました。でも、大学入学だけを目標にしている教育姿勢が自分にはあわず退職して、純粋に英語を教えられる環境を求めて大学院に進学し、非常勤講師としてさまざまな大学に勤務してきました。大学によって雰囲気はかなり違いました。大規模大学は事務的で、自分がかかわる以外の学生のことはわからないし、他の教員のこともわからないことも多いです。恵泉は学生・教職員がみな顔見知りで、お互いの距離がとても近く感じられます。教えたことのない学生も廊下などで出会うと声をかけてくれることもあって、はじめは戸惑いましたが、今はその雰囲気を楽しんでいます。

――かつての大学教員は大学院で専門の研究を深め、研究者としてアカデミズムの道を歩む人がほとんどでした。ですから、私もそうでしたが、大学という環境以外の経験がなく大学教員となっている人が大半かと思いますが、今回お迎えした皆様は、放送界・文化事業の最前線で活躍され、あるいは高校教員として、社会の縮図ともいえるほどに多様な生徒たちの育成にあたっていらしたり、初めから英語教員を目指したわけではなく、むしろ、途中から英語を教える魅力に目覚めたことで現在に至っておられる等々、今日に至るまで多彩な道を歩んでいらした方々ですね。
今、大学生たちも多様です。ですから、皆様のような先生方が恵泉で教えてくださるのは、学生にとっても幸せなことだと思います。一人ひとりの状況に自然体に寄り添っていただいているからこそ、学生も廊下で自然に声をかけてくるのではないでしょうか。
ところで、恵泉にいらして、新鮮な気づきや驚かれたことはありますか?

越智先生

大規模な大学での教員経験に比べると、恵泉は面倒見の良さのレベルが断然違います。教員・職員が皆、学生に対してきめ細かく対応していて、面倒見が非常に良いと思います。自分の大学時代の経験にはないことです。自分の時代にも、恵泉のように誰かしらに気軽に相談できる雰囲気があったら良かったなと思います。当時は「授業はこなくてもいい。試験ができれば良いから」という教員も多かったですから。恵泉は試験結果だけに重きを置いていない考え方を、教職員がみな持っているところがすばらしいと思います。

生田先生

これまで私が教えていた高校の環境はアナログでした。たとえば生徒に配布する印刷物は基本的にわら半紙、事務機器もコピー機ではなく印刷機が主流でしたし、会議も打ち合わせもすべて対面でした。そんな環境から恵泉で新学期を迎えたときに、すぐにオンライン授業に対応することになって戸惑いましたが、少しずつ慣れることができました。ただ、恵泉はIT環境を整備する一方で、コロナ禍にあってもできるだけ対面授業を大切にするという方針を基本としていることは素晴らしいと思いますし、共感できます。

鈴木先生

学生に対してのコミュニケーション量が多く、学生と教員の距離が非常に近いことに驚きました。学生が研究室に頻繁に出入りするなど、自分の学生時代には考えられない環境です。
恵泉は教職員が学生をとても大事にしています。大事にされた経験がある人は、必ず他の人との関係を大切にしながら強く生きていけると思いますから、素晴らしい環境だと思います。
その一方で、手を出しすぎないというバランスも必要ですね。社会に出たときのことを考えて、「この部分は自分で乗り越えなければ後で困るのは自分ですよ」と伝えることもあります。恵泉の学生はそうした厳しさに耐える力はしっかり持っていますね。あるテーマについて「グループみんなで考えてみて」という課題を出すと、協力して意見を出し合いながら、とても豊かな内容をまとめあげてきます。その力に驚いていますし、自分の言葉で意見を述べ・伝えることができる学生が多いことに感心しています。私もとても勉強させられることの多い一年でした。

――女子大ならではの難しさなどをお感じになることはありますか?

生田先生

高校勤務時代は「女子生徒のクラス内での居場所は新学期が始まってほぼ2、3日で決まる」と聞いていました。その期間内で、お弁当を誰と食べるか、どのグループに入るかが決まってしまうと。そのため、入学したばかりの頃やクラス替えのあとは、孤立してしまう生徒がいないか、昼休みにそっと教室をのぞきに行ったり、ちょっと声をかけたりと、いつも気にかけていました。やはり女子生徒の指導は気を遣うことが多かったです。でも、恵泉で「女子大生の本音」のようなことを聞いてみたところ、女子大のイメージがかなり変わりました。高校とは違って、大学ではどこかのグループに属さないとやっていけないとか、誰かと必ず一緒にいないといられない、ということは全くなくて、自分の行きたいところに行けば、必ず受け入れてもらえる、と学生たちは話してくれました。ですから、私の女子大のイメージは、少なくとも恵泉ではかなり変わりました。高校での経験が影響しているのか、「女子大は怖い」というイメージを持っている高校生もいるようですが、そんなことはないと、今度、機会があったら高校生たちにぜひ伝えたいですね。

越智先生

これまでの私の経験ですと、女子校に赴任したときは確かに正直とまどいましたし、男子と女子とでは教員として気を付けるところが違いました。ですから、他の女子大でのことですが、授業のやり方で気を付けていたことがありました。1年生の英語のグループワークでは、いろいろな人と交流できる絶好の機会と考え、グループワークを中心に、学生同士の交流が固定化せずに流動的になるよう工夫しながら心がけたのです。「はじめはひとりだったけれど、この授業で友達ができた」と言ってもらうこともあって、まずは学生同士が多くの交流できるような機会を作るのが大事だと思っています。その点、コロナ禍でのオンライン授業には苦労を感じました。

事務局長・学長室長(舘野)

恵泉はいわゆる一般的に言われる女子大特有の難しさは少なくて、自由に学べる雰囲気はあると思います。それでも、1,2年生については孤立させないような配慮は必要だと考えています。3年生くらいになると自然に友達も増え、教員などに自ら相談に行くことができますが、1,2年生のときに環境になじめないと、そのままずっと孤立してしまいがちになりますから。そういったことがないように、恵泉では大学では珍しい学年担任制を敷いて、教員の目が届くようにするなど工夫をしています。ともに助け合い話し合える友達・仲間ができるかどうかは、楽しい学生生活を送れるか否かの大きなポイントです。ほかの大規模な大学ではなかなか手が回らないと思いますが、恵泉はこういったところをこれからも丁寧な教育の強みにしていきたいです。先生方のこれまでのご経験をぜひ活かしていただきたいと思います。

――恵泉の良さをもっといろいろな人に知っていただきたいですね。どうしたらよいでしょう?

生田先生

恵泉のキャンパスは本当に美しいです。初めて来たときはその美しさに感動しました。学生たちがこの素晴らしい環境の中で学べていることを、様々なメディアを通してもっと広めたいです。

越智先生

私はいろいろな教員採用に応募しましたが、その中から恵泉を選んだのは、教育内容が魅力的だったからです。知名度では測れないものがある。それを教員一人ひとりがもっと伝えられたら。なにより学生がそれを実感してほしいですね。

学長室スタッフ(長尾)

私は恵泉の卒業生です。今まで多くの学生や卒業生と接してきて、恵泉には世間で言われている『偏差値』という物差しでは映し出されない、【学びの価値】があると思います。自分で学びの手ごたえを感じた学生や卒業生が「恵泉が好き」と自信をもって言っている、そんな印象はありますね。「好き」が学びになるのは大きな魅力だと思うし、それを広められたらと思います。

鈴木先生

河井先生の教育理念のすばらしさがもっと世間に伝えられたらと思います。小説でもドラマ化でもいいですし。しかも、河井先生の女子教育の理念を今、恵泉女学園大学は「生涯就業力」として打ち出しています。今、そして、これからの時代を生きる女性たちに必要な教育が充実しているというアピールポイントはしっかり揃っています。それを伝えていければと思います。

――最後に学生たちへのエールをお願いいたします

越智先生

入学時にはやりたいことがなくても、4年間の大学生活で紆余曲折しながらもさまざま経験しながらみつけていけばよいと思います。自分もそうでしたから。苦しい時もあるかもしれませんが、本学は教職員がしっかりサポートしてくれる環境があるので、どんどん様々なことにチャレンジしてほしいですね。

鈴木先生

自信をもって自分のオリジナリティを大切にしていただきたい。今のあなたのままでいいとお伝えしたいです。

生田先生

みんなそれぞれすばらしい個性があります。困ったことはひとりで抱えこまずに、友達・教員・職員の誰でもいいので、自分の気持ちを伝えられる人を作ってほしい。人とのつながりを大切に楽しみながらの学生生活にしてほしいと思います。

――今日は有難うございました。先生方はこれまでの豊かなご経験を基に、恵泉教育を新しい視点と感覚で受け止め、この多摩キャンパスに新しい息吹を吹き入れてくださっていて、とても嬉しくお話を伺いました。これからも引き続きよろしくお願いいたします。
左から鈴木・大日向・生田・越智 (敬称略)
前列 左から 大日向・生田・越智
後列 左から 長尾(学長室)・鈴木・舘野(事務局長・学長室長)(敬称略)