2021年1月11日

20歳を迎えたあなたへ

2021年01月11日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

緊急事態宣言が1都3県に再び発令されるという厳しい状況下で成人の日を迎えられました。いろいろなことを我慢し、不自由さと先行きヘの不安でいっぱいなのでないかと思うと、"おめでとうございます"の言葉が滑らかに出てこない想いです。"ピンチをチャンスに!"という言葉が、あちこちで聞かれます。でも、若いみなさんにそれを簡単に言うこと もためらわれてなりません。ピンチよりもサクセスの喜びをたくさん味わってほしいと願っているからです。

ただ、私のように年を重ね、失敗も挫折もさまざまに重ねてきた者には、これ以上ないほど理に叶った言葉でもあると思います。当たり前の日常が奪われ、自粛が強いられている今だからこそ、内向きになりがちな視線をいっそのこと、さらに内側に向けてみてほしい。ご自分を見つめ、ご自分が本当にやりたいことはなにかを問い続けてみてください。それは同時に社会のありように目を開くチャンスかもしれません。「感染症は私たちの社会の病巣も暴き出す」とは、コロナ禍の市民生活を綴った『武漢日記』の作者、方方(ファンファン)氏の言葉です。皆さんがこれから取り組むべき課題を広い世界の中から見つけ出すチャンスです。そのために恵泉での学びを活かし、知を紡ぐ努力を確かにする新たな一歩を、勇気をもって踏み出していただければ、こんなにうれしいことはありません。

「自分自身開拓者となって道を明るく照らしていく者におなりなさい。マイランターンで」。河井道先生のこのお言葉が今ほど必要な時はありません。世界中の人が、日本中の人が、一つのことに目を向け、願いを一つにしています。あなたがあなたらしく生きるために、自ら開拓者となる道は厳しいかもしれませんが、けっして孤独な闘いではないはずです。皆が闘っています。皆で力を合わせるときです。

これからの人生があなたらしい豊かさに充たされることを、そして、他者と共に支えあう確かな共生の道へとつながることを願い、今日の日がそのための記念の日となることを願って、心からお祝い申し上げます。