2019年度スタートにあたって ~2019年度大学の事業計画について~

2019年04月01日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

本日から2019年度がスタートいたします。
午前10時から人間社会学部と大学院平和学研究科、午後2時から人文学部と大学院人文学研究科の入学式が執り行われます。その様子については来週のこのブログでご報告させていただきます。

本日はそれに先立って、3月の理事会と評議員会で、2019年度の大学事業計画が承認されましたので、ここにご報告いたします。

本事業計画は昨年の夏休み明けから、全教職員が一丸となって意見を出し合い、懇談を重ねながら作成したものです。その前提には、昨年度、大学基準協会の自己点検・評価で受けた「適合認定」、それに続く文部科学省の学校法人運営調査、そして、外部評価等々、外部の多くの委員の皆様からいただいた貴重なご指摘・ご助言を精査し参考にさせていただいたたものであることも、ここに感謝をこめて記させていただきます。

なお、事業計画は非常に大部なものですので、ここではその概要と目次のみのご紹介となりますが、本年度の大学の教育研究活動の基本となる重要なものですので、ポイントのいくつかについて、少しだけご説明をさせていただきます。

まず、2019年度の事業計画の骨子は、私が学長に就任した2016年度以来、掲げている「生涯就業力」の徹底・深化を図ることです。「生涯就業力」とは「生涯にわたって何があっても自分らしく生きる目標を忘れず、身近な大切な人、地域・社会のために尽くすことに喜びを見いだし、凛としてしなやかに生き続ける力」ですが、この理念は、今から90年前、平和な社会に尽くす自立した女性の育成を目指して恵泉女学園を創立した河井道先生の女子教育の理念を女子高等教育機関である女子大学として継承し、女性活躍時代にふさわしい女性の力として掲げているものです。

本学の教育理念とそれに基づいた学びの特徴は、大学設立以来、30年の歩みの中で社会から高く評価されています。教育のきめ細やかさの調査では全項目に満点を獲得した全国唯一の女子大です。文部科学省のインターンシップ表彰では、全国168の大学の内、最優秀賞に次いで2番目の選考委員会特別賞を受賞しました。さらに「THE世界大学ランキング日本版」では、去る3月27日発表のランキングでも、国際性でランクインし、3年連続首都圏女子大第1位です。何より嬉しいことは「入学後、生徒を伸ばしてくれる大学」として高校の先生方から高い評価をいただいていることです。
しかしながら、こうした実践の体系化・全学的な組織化は必ずしも十分ではなかったことは率直な反省点でもあります。「生涯就業力」育成を掲げてきたこの3年間の実践を基に、改めてこれまでの教育研究活動を精査し、PDCAサイクルの徹底を図ることに注力いたします。

中でもとりわけ重点課題としていることは「教育の徹底」です。「生涯就業力カリキュラムの確立」「授業改善の取り組み」「基礎学力の確立」「教員力の充実」に注力いたしますが、本年度は、「生涯就業力STEP」科目を新設いたします。本学で実施する授業・ゼミ・学生活動のすべてを「生涯就業力」育成の観点からPDCAを行うことは勿論ですが、そのホームベースともなる講座を下記の通り、1年から4年生までが学べることをめざして開講いたします。

自分の目標を立てながら成長を確認していく時間
1年 STEP1 自分との出会い 恵泉で学ぶ意味、自分の人生を考えるスタートにする
STEP2 自律と自立、暮らしを考える
2年 STEP3 他者との出会い 他者と学び、分かち合う力をつける
STEP4 自信を持って学び、学んだことを生かす
3年 STEP5 社会・世の中との出会い 自分の良さを知り、相手に伝える
STEP6 社会を知り、仕事選びの軸を定める
4年 STEP7 自分に立ち返る 自分を見つめなおし、自分の言葉で語る

女子大の教育に携わる者として、女性活躍の時代を生きる若い女性たちの健やかな成長を見守ることができることに勝る喜びはありません。引き続き、今年度も皆様のご支援とお祈りをいただけますよう、新年度スタートにあたって、ご報告と共にお願い申し上げます。

大学の事業計画(2019年度)

(1)基本方針

2016年度大日向雅美学長就任より教育目標としている「生涯就業力を磨く」を、真に具現化するために全教職員が各役割を日々徹底して実践する。

1)教育の徹底

学生一人ひとりに「生涯就業力を磨く」ための教育を徹底し学力を向上させる。
(ア)生涯就業力カリキュラムの確立
(イ)授業改善の取り組み
(ウ)基礎学力の確立
(エ)教員力の充実

2)学びの支援

「生涯就業力を磨く」ための学びの支援により、在学中はもとより卒業後に及んで、学生満足度を確実に上げる。
(ア)学修および学生生活支援
(イ)就職活動支援

3)社会への発信

「生涯就業力を磨く」学生、卒業生と、その教育内容を学内外のステークホルダーに具体的に広報していくことで、「生涯就業力を磨く」恵泉ブランドを社会に発信していく。
(ア)インナーブランディング
(イ)アウターブランディング
(ウ)地域貢献活動
(エ)教育成果の発信
(オ)研究成果の発信

4)継続と発展

上記1)2)3)の検証として各年度数的評価を主として行いPDCAサイクルにより改善していく。その結果入学定員を確保し収支のバランスを図り、2023年度より大学単体での黒字経営を実現する。
(ア)入試広報(学生募集)
(イ)収支バランスと財務計画
(ウ)教職員数と人件費
(エ)ガバナンス体制
(オ)PDCAサイクルの確立
(カ)人財の育成(FD/SD研修会)
(キ)施設設備計画の策定と実施

(2)事業計画の概要 

  • 「生涯就業力」=「生涯にわたって自分らしく生きる目標を忘れず、身近な大切な人、地域・社会のために尽くして生き続ける力」の理念は、"小規模大学" "女子大学" "都心から離れたところに所在する大学" "キリスト教主義の大学"という、今日、社会一般的にはネガティブ要因とされている本学の特性を逆転発想でプラスへと転化することに大きく寄与するものである。そのことをすべての事業計画の基本とし、通貫を図る。
  • 「生涯就業力」のさらなる深化・可視化を図り、インナーブランディング・アウターブランディング戦略を徹底する。
  • "入学後、生徒を伸ばしてくれる大学" "教育のきめ細やかさ""国際性"等、これまで本学は高い評価を得てきたが、学生の何を、どのような方法で伸ばすのか、教育のきめ細やかさとは何か、本学の特性との関連のもとで改めて精査し、体系化・全学的な組織化と共に、PDCAサイクルの徹底を図る。
  • インナーブランディングの充実・徹底は在学生の教育・学修支援の一層の充実であり、その具体的な目標を退学者対策・中退ゼロに置く。具体的には、2018年度に一定の成果をあげた学年担任会の活動、およびラーニングコモンズ等の学修支援活動の継続・強化を図る。
  • 学生一人ひとりが恵泉での学びが自身の将来の人生を確かに生きる力となることを自覚できることが、女子高等教育機関として大学が学生に提供する学びの使命の基本であり、大学への信頼もこの点が核となる。すべての授業・ゼミ等でこの点の徹底を図り、そのためのカリキュラム改革を進めつつ、まず2019年度には「生涯就業力STEP1~7」科目を新設・開講し、生涯就業力の可視化と明示化を図る。
  • 「生涯就業力」は文字通り、女性の人生の生涯にわたって磨かれるべきものであり、その支援に注力することは女子大としての本学の使命でもある。