美しい桜の陰で働く本学の学生たち

2019年03月11日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

桜の開花予想が聞かれる今日この頃ですが、それに先駆けて、2月の下旬に「日本一早いお花見」を堪能してきました。

会場は、今話題の日本橋「COREDO室町」の日本橋三井ホール。会場に一歩足を踏み入れた途端に、春爛漫の色彩と香りに包まれて幻想的な世界が広がりました。
FLOWERS by NAKED

...360°桜に包まれるアート空間「大桜彩」やいけばな草月流、志野流香道との伝統文化コラボレーションから生まれる、"花、そして伝統と革新"の世界へ...とパンフレットに記された世界をここにお伝えできる自信は残念ながらありません。"伝統と革新のアーティストの集結"にただただ圧倒されて、幻想の異世界にしばし浸りました。

ホール入口
会場入り口
メインホール
草月流しだれ桜

でも、私がこのイベント会場を訪れた本当の目的は、ただ日本一早い花見を楽しむためではありませんでした。
"ただ今、開催中の「日本一早いお花見 Flowers by Naked」というイベントで、本学学生8名が、展示している花(啓翁桜)のメンテナンスをしています。学生の活躍ぶりをぜひご覧いただければ幸いです"というキャリアセンターからの案内に誘われてのことでした。

イベントが20時に終わり、来場者が去ったあと、そこからが恵泉の学生(社会園芸学科)の出番でした。会場を飾っている生の桜木を鉢ごとシンク(洗い場)まで運び、透明な花瓶の中に積まれている飾り石の一つひとつを、そして、桜木を丁寧に洗い、水を換える作業を行っていました。花瓶はどれも大型で、しかも水と石が入っていてかなりの重さです。桜の花を散らさないよう細心の注意を払いつつ、シンク(洗い場)と会場の間を重い花瓶をカートに乗せて何回も往復している学生たちの姿に思わず目頭が熱くなる思いでした。目立たないところで、黙々と地味な仕事をこなす学生たちの真剣な面持ちが今も目に残っています。

展示されていた桜の運び出し
展示されていた桜の運び出し
シンクで花瓶の洗浄
新しい桜を指定された場所へ
新しい桜を指定された場所へ

この作業の指導をしてくださっている、堺美和子さん(フラワーショップ『AROMATIQUE (アロマティーク)』代表)は、「このイベントは、恵泉の学生さんのボランティアで支えられているんですよ。本当に素晴らしい学生さんたちです」と言ってくださいました。

"働くとは見返りを求めない愛かもしれない。見返りを求めず、社会のために尽くす。それを喜んでくれる人がいて、その人たちの喜びが自分の喜びになる。見えざる報酬とはこういうことでもある"
丹羽宇一郎氏の『仕事と心の流儀』(講談社現代新書 2019)の一節を思い出しました。

「日本一早いお花見」に来場する人々の喜びの姿と声を思い描きながら、恵泉の学生たちは別の喜びをいただいたことと思います。

左端が堺美和子さん