2017年度入学式 式辞「あなたの未来はあなたの手に」

2017年04月03日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。
ご列席のご両親・ご家族・保証人の皆さまのお慶びもいかばかりかと存じます。
教職員一同を代表いたしまして、心よりお祝いを申し上げます。

さて、本日、ここに入学された皆様のお顔を拝見し、恵泉女学園大学でのこれからの4年間、大学院生の方にとっては2年間が、皆様の人生にとってかけがえのない時となることを祈る思いで、私は今、皆様の前に立たせていただいております。

それは何があっても どこにあっても しなやかに 強く 自分らしく生きる力をこの学び舎で磨いていただきたいと願う気持ちです。そして、皆さまの大切な未来のために、全教職員が出来得る限りの支援をさせていただくことをお誓いすることでもあります。

女性活躍の大切さと必要性が各方面で言われています。
ようやく、女性が、自分の未来を、自分の手で創ることができる時を迎えているのです。

皆様には真の女性活躍を目指していただきたい。
女性活躍と言っても、華やかで、きらびやかな活躍にだけ目を奪われてはなりません。
人生は地道なことの積み重ねです。自分らしく生きる目標と希望を常に探し続け、自分らしく生き続ける力を磨いていただきたい。それがご自分を大切にして生きることであり、ひいては周囲の方々を幸せにすることにつながると私どもは信じております。

もっとも、「自分らしく」と、私たち年長者は若い人に向かってよく言いますが、実はとても難しいことです。私自身の若い頃を思い出しても、自分らしさとは何か、よくわかりませんでした。皆さまの何倍も長く生きて、今なお迷うことがあります。
女性として、妻・母として、教師・研究者として、迷いの道を長く通ってきたからこそ、女性が自分らしく生きることを求め続ける大切さを痛感すると申し上げてよいかと思います。
同時に女子大であるこの恵泉女学園大学の教育の意義を確信しております。

恵泉は、人文社会科学領域の学びを主とする、いわゆるリベラルアーツ教育の大学です。
「聖書」「国際」「園芸」を学びの基礎として、女性として生きる基本を確かにする教育は、1929年に恵泉女学園を創立された河井道先生の教育理念であり、以来、90年近く一貫して大切に受け継いでいるものです。

恵泉女学園はプロテスタント・キリスト教主義の学校ですが、クリスチャンであることを皆様に求めることは、しておりません。
ただ、「聖書」が教える普遍的な愛を人づくりの基本としております。
自分を愛するように他の人を尊重する心を「聖書」に。
アジアや欧米の各地に出向き、価値観や生活習慣・文化の違いを体験して、偏見や差別に立ち向かう心を「国際」に。
土に親しみ、植物を育て、いのちと自然を慈しむ心を「園芸」に学んでいただきたいと思います。
この3つの学びの基礎の上に、多くの専門の学びとフィールドスタディ等の実体験を重ねながら、知識と教養・技術を磨くことが、冒頭で申し上げた「何があっても どこにあっても しなやかに 強(したた)かに生きる力」になるのです。

恵泉女学園大学は、「小規模だが評価できる大学・入学後に学生の満足度が高い大学」として、常に全国女子大のトップ10に入っております。とりわけ入学後に生徒を伸ばしてくれる女子大として、この数年、全国3位・4位を飾っております。

これは少人数できめ細やかに教育・学修支援をしている成果と考えております。
1年生からゼミを必修とし、4年間を通した学びの集大成としての卒業論文・卒業作品の完成まで、アカデミックアドバイザーが指導を行います。
大学では珍しい学年担任制をはじめとして、アカデミックな学びを支えるための学修支援もさまざまな場で展開して、皆さまの学生生活を見守らせていただきます。

こうした恵泉女学園大学の特徴をどうか存分に活用してください。
そのためにも、先ほどお読みした聖書の言葉をいつも心に覚えていらしてください。
「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる」。

学生が求めようとすることに、大学は誠実に応えます。
学生が探そうとすることに、大学は懸命に寄り添います。
門をたたいてくだされば、大学はいつでも門を開く準備をしております。

なぜなら、恵泉女学園大学は、皆さまの未来を心から大切にしたいと考えているからです。
全教職員が心をこめて皆さまの未来と向き合い、「生涯就業力」の基礎を身につけていただきたいと願っているからです。

今、「生涯就業力」と申しましたが、聞き慣れない言葉かと思います。
「就職力」という言葉はよくお聞きになっていらっしゃるかと思います。
ご家族の方々も、お嬢様が大学を卒業されたら、どこに就職するかに関心をお持ちのことと思います。確かに就職も大切ですので、キャリアセンターをはじめとして、就職支援に注力しております。

しかし、女性の人生を考えてみると、卒業時点での就職がすべてではありません。
女性の人生は長く、変化に富んでいます。
結婚や子育て・介護などで人生設計を変えることも少なくありません。
女性活躍の時代と言われていても、女性の人生の行く手にはさまざまな壁が立ちはだかっていることも現実です。その都度、人生設計を変え、あるいは働く場を変え、資格や経験を新たにする必要性にも迫られることでしょう。

何があっても どこにあっても 目標と希望を失わずに探し続ける姿勢と努力が必要です。
生涯にわたって、常に自分を見つめ、自分にできることは何かを考え続ける中に、身近な大切な人のために、地域・社会のために尽くす喜びも見出していく。それを私どもは「生涯就業力」と呼び、その基礎となる力を磨くことが女子大の使命と考えております。
現実の社会では、求めても、すぐには与えられないことが少なくありません。
探しても、そう簡単に見つかるとは限りません。
どんなに門をたたいたとしても、すぐには開かれない門も多いことでしょう。
だからこそ、求め続け、探し続け、たたき続けるのです。

その勇気を持つためには、若い時に求めたら与えられる経験。探す過程に寄り添ってもらう経験、たたけば応えてもらえる経験が欠かせないと私どもは考えております。

だからこそ、恵泉は学生が求めようとすることに、誠実に応え、学生が探そうとすることに、懸命に寄り添い、たたかれた門はいつでも開く準備をしたいと考えているのです。

そう言われても、自信がない、自分は未熟で、なにもできないと思うかもしれません。
若い皆様が、自信を持てなくても、当然です。
それはご自分の人生に謙虚に向き合ったこと、ご自分の人生の入り口にしっかり立ったことの証しなのです。

勇気を奮い起して挑戦しても、失敗することもあるかもしれません。
どうか失敗を恐れないでください。失敗は若さの特権です。

もちろん、失敗をすれば、傷つくこともあるでしょう。
でも、このキャンパスに集う私たちは皆様をけっして一人で放置することはいたしません。
教職員が、友人先輩たちが、いつも見守り、手を差し伸べようとしていることを信じて、この学び舎での生活をスタートさせてください。

最後になりましたが、大切なお嬢さまの進学先として、この恵泉をお選びくださいましたご両親さま・ご家族・保証人の皆さまに感謝を申し上げます。

恵泉女学園大学の教育は、これから女性が生きていくうえで必ずや大切な力となることは、私自身、開学当初から今日まで28年にわたって奉職し、あまたの卒業生を送ってまいりました経験からも確かにお伝えできることと存じます。
皆さまが今日までお嬢さまを慈しみお育てになっていらしたお気持ちを思い、そのご期待にお応えすべく、大切にお預かりさせていただきますことをお伝えいたしまして、学長としての式辞を終えさせていただきます。本日は本当におめでとうございます。

学長 大日向雅美