恵泉祭報告~その2~

2019年11月18日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

先週に続いて「恵泉祭」について。リユニオンとミニシンポジウム「卒業生にみる女性のキャリアと『生涯就業力』」についてご報告いたします。

リユニオンは卒業後25年の方々をお招きしていますが、今年は短期大学英文学科・園芸生活学科43回生と大学3回生の90名余りの方々が、関東近県はもとより東北地方や中国・九州地方など全国各地から大学に帰ってきました。
本多洋子先生が一人ひとりに心をこめて手作りしてくださったコサージュを胸に、一段と華やかさを増した卒業生たちでした。
礼拝を終えて、懇親会場へ。12のテーブルに分かれて、懐かしい教職員と共に昼食のひと時をもちましたが、どのテーブルもはちきれんばかりの笑顔と楽しげな会話に充ち溢れていました。

本多洋子先生手作りのコサージュとそれを胸に飾る卒業生たち
本多洋子先生手作りのコサージュとそれを胸に飾る卒業生たち

本多洋子先生手作りのコサージュとそれを胸に飾る卒業生たち

礼拝を終えて
懇親会場へ

卒業後、ずっと同じ企業に勤めてキャリアを積んでいる人、現在、子育て真っ最中の人、子育てや夫の転勤で一時仕事を辞めて、子どもの手が離れた今、再就職先で新たなキャリアに挑戦している人、いくつもの仕事を重ねながら、今、新たな資格に挑戦しようとしている人等々、さまざまでした。地方の旧家に嫁いだという人は、お姑さんから「なぜ、この忙しい時にわざわざ東京まで?」と訝られたそうです。「ただのクラス会ではないんです。大学が招待してくれたんです。私、どうしても行きたい。行きます!」と宣言したところ、お姑さまが快く送り出してくださったそうです。「お姑さまとなんでも言い合える良い関係なんですよ」と明るく屈託のない笑顔でした。河井先生の言葉通りに、「イエスとノーをはっきり言える女性」をさわやかに実践してきたことでしょう。

「教職員からかけられた"お帰りなさい"の言葉に胸が一杯になって、涙が溢れてきました」と何人もの方が言う言葉を聞きながら、卒業してから今日まで、歩んできた道のりが思われてなりませんでした。元気はつらつと輝いている今の姿の裏には、おそらくさまざまなことがあったことでしょう。それを乗り越えて帰って来てくれた卒業生たち。どうかこれからも、しなやかに強く凛と輝き続けてほしいと願いました。司会進行役の岩佐玲子先生もきっと同じ思いだったことでしょう。「皆さん、さあ、また行ってらっしゃい!」の言葉で、リユニオンの会はお開きとなりました。

司会の岩佐玲子先生

続いて、開催されたミニシンポジウムには、次の4人の卒業生が登壇してくださいました。

  • 伊藤美希子さん(2001年度国際社会学科卒/株式会社ベストインクラスプロデューサーズマネージャー)
  • 井場愛美さん(2008年度英語コミュニケーション学科卒/ANAエアサポート株式会社 旅客サービス6課)
  • 渡邉亜希子さん(2005年度卒/株式会社Zeta編集部)
  • 中村美沙さん(2011年度国際社会学科卒/株式会社ジャパングレイス海務部ピースボートSTORE管理)

現在、それぞれの領域の第一線で活躍していますが、ここに至るまでには転職や部署替え等、さまざまな経験をしてきたとのことです。
さぞや苦労がいっぱいと思いきや、"たしかに走りっぱなし!バタバタあがいています"と言いながら、岐路に立っても、新たな挑戦を楽しみながら乗り越えてきたということでした。

4人の方々の心に残る言葉をいくつかご紹介いたします。

"社会人になってから、こんなに学ばなくてはならないとは思わなかった。日々、学びの連続です"
"いろいろなことに興味を持ってきた。好奇心が私の仕事の原動力です。好奇心がなくなったら仕事もおしまいと思っています"
"仕事をしていくうえで人間関係が基本。人に対するときは気の抜けない真剣な気持ちで正面から立ち向かってきました。そうして応援してくれる人を得て、道を切り開いてきました。
"今なお、悩みの連続です。でも悩み続けている自分もいいと思えるようになりました"
"やらない後悔よりもやった後悔のほうが良い。失敗はデータになります"

ミニシンポジウムに参加された宗雪雅幸理事長が4人の登壇者に向かって、「あなた方はまさしく河井道先生の娘だ!」と言われた言葉に深くうなずく思いでした。

挨拶をされる宗雪雅幸理事長
司会進行の定松文先生
参加者の質問に答える登壇者たち
最後に皆で記念撮影

当日、司会を担当した定松文先生から、「司会を終えて:裏話的に」という寄稿をいただきました。

登壇していただいた4人の方には事前に、①大学生活、学びについて、②キャリアの重ね方、③今後どんなふうになりたいか、④後輩へのメッセージについて話す準備をお願いしていました。当日の1時間の打ち合わせの中で「自己紹介を兼ねたキャリアの重ね方と現在」、「大学時代にやったことで今のキャリアにどうつながったか」、「今後の展望」、「学生へのメッセージ」という順で話していただくことにしました。そうすると、今の働いている様子がわかる写真あったほうがイメージがわきやすいではという、突然の私の提案(無茶ぶり)に対して、みなさん、ササササーッと手持ちのPCやiPad、スマートフォン等から送ってくだり、開会ぎりぎりでパワーポイントを完成することができました。おそらく、何を振られてもいいように想定して、ご準備されてきたのだと推察します。

その打ち合わせの際も、お互いに知り合おうという気持ちがあるので、最近の仕事で困ったことなど交えながら、「えーーその話おもしろい!」といった楽しい異業種懇談会になっていました。そこから、固いプレゼンテーションのシンポジウムでなく、お互いに語り合うような感じにしたほうが楽しいですよねと、トークセッション型にしようということになったというのが実際のところです。

シンポジウム終了後も、学生たちの質問に遅くまで対応していただき、シンポジウムの中では聞けなかった、地域貢献の場での仕事の展開の仕方、船上員の仕事の面白さ、航空業界の会社ごと髪型やエントリーに向けて準備すべきことなど、学生へ暖かいアドバイスをいただき、聞いていた学生はほほを染め、本当にうれしそうにしていた姿が印象的でした。出版業界もインターンを公開していなくても直接言っていただければと、本当にご自分の仕事を誇っているからこそ、後輩にも挑戦してほしいという言葉もいただき、出会いを大切にして、多様なロールモデルに出会うことが、学生たちの今後の進路にとって重要なことだと確認したひと時でした。

彼女たちの行動力とコミュニケーション能力の高さ、そして他者を思いやる心の深さが伝わるシンポジウムの一日は社会人になられてからの彼女たちの一歩踏み出す勇気、前向きな姿勢、相手を知ろうとする心がけ、そしてなによりも知識や技術を得るために惜しまず努力する姿勢の賜物だと感銘をうけ、心温まる一日となったことに感謝いたします。

「キャンパスの隅々に美しい花や植栽が整えられていて、在学時代は気がつかなかったけれど、私たちはこうして大切に守られていたんだということが、帰ってきて改めて気がつきました」「こうして帰れる場があることが、心の支えです」という言葉を残して、それぞれの場に帰って行った卒業生たち。この多摩キャンパスを守り続ける大切さを改めて思った一日でした。