生涯就業力と絵本

2026年11月02日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

昨日から11月、次第に秋の深まりが感じられると共に、本に親しむ季節を迎えました。
今日は絵本と恵泉ブランド「生涯就業力」について、考えてみたいと思います。

きっかけは、過日、(株)ハースト婦人画報社様より「絵本が大人の心にもたらすもの」というテーマで鼎談の機会をいただいたことです。
鼎談をご一緒させていただいたのは、草刈大介氏と沖本敦子氏。それぞれがおすすめの絵本を持ちより語り合う豊かな時間となりました。 *草刈大介氏 展覧会プロデュースをはじめ、本やグッズの企画制作等を行うブルーシープ代表 *沖本敦子氏 『だるまさんシリーズ』や『ヨシタケシンスケの発想えほんシリーズ』など、多くの人々に愛される絵本を手がける編集者

私が持参したのは、次の4冊です。
『ちいさなあなたへ』(ピーター・レイノルズ)/『夜の絵』(柚木沙弥郎 絵・村山亜土 作)/『おおきな木』(シェル・シルヴァスタイン)/『ミッシングピース』(シェル・シルヴァスタイン)

折に触れて読み返してきた絵本ですが、改めて並べてみると、いずれも「孤独」がひとつのテーマとなっていることに気づかされました。
とはいえ、それはけっして寂しさを強調する孤独ではありません。
むしろ、他者の大切さを知り、他者と共に生きるために必要な「孤独」です。カミュの小説『ヨナ』の中のsolitaire(孤独)とsolidaire(連帯)との関係性を示す一節も思い出されました。

戦争や紛争、貧困格差やSNSでの誹謗中傷など、困難があとを絶たない今だから、私たちは他者を心から大切に思いたい。そのためには、まず自分を大切にすることを忘れてはならないと思います。
それはまさに恵泉ブランド「生涯就業力」の理念---生涯にわたって自分らしく生きる目標を忘れず、身近な大切な人、地域・社会のために尽くして生き続ける力---の根本につながるものです。

学生たちは入学以来、さまざまな視点からこの「生涯就業力」について学んできました。
先日、4年次生の必須科目「生涯就業力STEPⅧ」(下図参照)で、この絵本をテーマに話をいたしました。まもなく社会に巣立つ学生たちは、一人では生きられないことに思いを新たにする場面も多いことでしょう。他者との健やかな関係性を育んでほしいとの願いと共に、「一人でいることの強さと美しさ」を心のよりどころとしてほしい。言葉が研ぎ澄まされ、豊かな余白に充ちた絵本だからこそ、自分自身を静かに見つめる時間を与えてくれるのだと思います。
講義の後には、"社会に出る前に、改めて恵泉ブランド「生涯就業力」の意味をかみしめることが出来た"という感想が数多く寄せられました。

なお、この鼎談は『婦人画報』12月号(10月30日発行)に掲載されています。
草刈大介氏と沖本敦子氏のおすすめの絵本とお話もとても素敵です。
ご覧いただければ幸いです。

11月8日(日)はいよいよ「恵泉祭」ファイナルと「リユニオンin 多摩」が開催されます。皆様のご来場をお待ちしております。
なお、このご報告は11月16日(月)に行いますので、来週(11月9日)の本ブログはお休みとさせていただきます。