恵泉ディクショナリー

源氏物語絵巻日本語日本文化学科

[げんじものがたりえまき] 

源氏物語絵巻とは

『源氏物語』を絵画化するいとなみは、物語の成立直後からおこなわれたと考えられています。絵巻、冊子、扇面、色紙、屏風、さらには、蒔絵や着物の意匠など、さまざまなかたちにあらわされ、現代に至っては、写真や映画、漫画などの新しいメディアや、能や歌舞伎、宝塚歌劇などの舞台芸術としても加工されています。 けれども、初期の作品の多くは失われ、現存する最古の遺品は12世紀に制作された「源氏物語絵巻」です。 なお絵巻とは、物語のすべて、あるいは一部を記した詞書と、それに対応する絵を交互に継ぎ合わせた横長の巻物形式の絵画作品のことをいいます。

この絵巻は、徳川黎明会に15段分の詞書と絵と1段分の詞書、五島美術館に4段分の詞書と絵が所蔵されているところから、徳川・五島本「源氏物語絵巻」と呼ばれています。 1978年に若紫の絵が発見され、20段分の詞書と絵が明らかになりました。 これは、当初の4分の1から5分の1に相当する量と考えられています。 そのほか、8葉の詞書断簡と1葉の詞書断簡の模本が知られています。 現在では、保存のために巻子装を解かれ、詞書は2紙ごと、絵は1段ごとに切り離され、桐箱の中に収められています。 徳川黎明会の所蔵品は、名古屋の徳川美術館で保管され、毎年秋に数段ずつ展示されています。五島美術館の所蔵品は、毎年春に展示されるほか、5年ごとに、交互に全巻展示がおこなわれています(2010年は五島美術館、2015年は徳川美術館)。

恵泉では、2年次の日本文化基礎研究Ⅲで徳川・五島本「源氏物語絵巻」の絵について学び、3年次の日本文化史演習Ⅱ(3年ゼミ)で詞書と絵の違いを検討します。 ゼミ旅行では、毎年「源氏物語絵巻」の橋姫段、早蕨段の舞台になった宇治を訪ね、源氏物語ミュージアムなどを見学しています。

2010年09月22日 筆者: 稲本 万里子  筆者プロフィール(教員紹介)

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