恵泉ディクショナリー

トリクルダウン効果国際社会学科

[とりくるだうんこうか]  trickle down effect

トリクルダウン効果とは

トリクルダウン効果とは、大型公共投資や税の優遇などを通じて大企業や高所得層の経済活動を活性化させ、社会全体の経済規模の拡大によってえられた富のしずくが高所得層から中所得層に、さらに中所得層から低所得層に流れ落ち、結果として社会全体の利益となるという考え方である。中国の鄧小平の提唱した「一部の人、一部の地域が先に豊かになることによって、最終的に 共に豊かになる」という共同富裕論は、これを狙った典型例とも言える。
第二次大戦後の日本では、所得倍増計画、日本列島改造論といった政府主導の開発政策の実施によって、総中間層と呼ばれるような所得構造に至ったことから、このトリクルダウンの効果はあったという説もある。しかし、経済構造が複雑化している現状では、残念ながら、経済の規模は拡大しても、高所得層はますます富裕になり、中間層は増大するも、低所得層の所得向上・社会福祉の増進は進まず、社会の格差は拡大し続けていることから、最近ではこの考え方の有効性は疑問視されている。
しかし、先進諸国から開発途上諸国への援助の多くが、途上国政府の実施する大型経済インフラ整備に充当されるのは、これによって国内外からの民間投資を誘発し、高所得層や中間層から低所得層への富のしずくが届くことで、いわゆる貧困削減を狙ってのことである。
関連する用語としては、貧困、貧困の罠、テイクオフ、国際協力・ODA、ビッグプッシュ理論などがある。
恵泉では、国際関係入門、国際協力論、ODA論といった講義でこれらの用語の説明が行われている。

2012年11月19日 筆者: 谷本 寿男  筆者プロフィール(教員紹介)

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