第二外国語は何が良いのでしょうか? 英語コミュニケーション学科

2021年12月09日
 ゼミ/授業名:桃井ゼミ

現在の私は「英語コミュニケーション学科」の教員ですが、元々、写真家として、ドキュメンタリー作家として、世界140カ国を訪れ、様々な社会問題の現場【紛争、戦争、環境破壊、飢餓など】を取材してきました。

これらの経験を基に、今「世界はどのように動いているのか?」「地球はどのような状況にあるのか?」を学生たちに伝えています。それが私の担当する「表現力実践講座」や「国際情勢論」などの授業要旨です。

グローバル化した現在の世界では、国や人種、文化や歴史の違いを越えた高度なコミュニケーション能力が求められています。そうした能力の獲得を目指した恵泉の「英語コミュニケーション学科」では、「英語」+「コミュニケーション」というキーワードで、多彩な経歴を持つ教員が、きめの細かい教育を実践しています。

私が担当するこのブログでは、世界の取材の現場で多様な人々と出会い、交流を重ねた経験から見えてきた「コミュニケーション」を改めて考察します。

第二外国語は何が良いのでしょうか?

「第二外国語は何が良いのか?」と学生たちから質問されることがよくあります。
私自身は、スペイン語を第二外国語にしています。これは1980年代末から2年間、ペルーを拠点に中南米を取材していたからなのです。
人の出会いと同じように、言語も、「たまたま」出会い、学ぶ人が多いのではないでしょうか。それで良いと思います。たまたまの出会いが、「韓国語」や「中国語」、「フランス語」やその他の言語でも、それぞれにきっと、学ぶ前からは想像も出来ない体験が待っているはずです。どんな言語であれ、言葉とは、新しい世界と出会うための貴重な「道具」なのです。

さて、その前提の上で、今回は、スペイン語を第二外国語にして良かったことをお伝えします。

【その1】発音が簡単

スペイン語の母音は、順番は違うものの、日本語と同じ「あ」「い」「う」「え」「お」なのです。特に、中南米のスペイン語は、日本語の発音に近く、単語だけなら少し習っただけでも、現地の人と間違えられるほど上手に音が出せるようになるのです。私自身、ペルーでは何度も地元の人に間違えられました。

ちなみに、スペイン本国のスペイン語と、中南米のスペイン語は、発音も多少異なり、中南米の人からすれば、「スペインのスペイン語は気取ったスペイン語」、スペインの人からすれば、「中南米のスペイン語は田舎者のスペイン語」に感じられるのです。
また中南米の中でも、先住民の子孫たちが多いペルーやボリビアと、ヨーロッパからの移民が多いアルゼンチンやチリなどでは、発音が多少異なります。
日本でも関東と関西では、言葉のイントネーションなどが違うのと同じような違いです。

【その2】世界のスペイン語人口

世界で英語を母語としている人が5.1%であるのに対し、スペイン語を母語にしている人は6%(CIA WORLD FACTBOOK 2018年)。つまり母語という側面からみれば、スペイン語を話す人の方が、英語を話す人口より多いのです。

ただし英語を話すことができる人の割合から考えると、英語が一気に増え、世界の16.5%であるのに対し、スペイン語は7%。(CIA WORLD FACTBOOK 2020年)ですが、この二つの言語が話せると実の多くの国で現地の人との会話が可能になるのです。
アメリカでも、カリフォルニアやテキサスは中南米出身者が多く、スペイン語が驚くほど使えます。そしてスペイン語が話せると、すぐに彼らと打ち解けることができるようになるのです。

【その3】ラテン語から派生した言語

スペイン語は、ポルトガル語、イタリア語、フランス語などと同じように、ラテン語から派生した言葉です。そのためスペイン語を知っていると、ポルトガル語ならかなり、イタリア語の場合、多少は理解できる場面が多いのです。スペイン語を話せても、フランス語は理解できませんが、フランス語が話せる人は短時間でスペイン語を習得できると言われています。基本的な文法が似ているからです。
また、英語もラテン語から多くの影響を受けている関係で、英語を知っているとスペイン語の単語の意味を推測できることも少なくないのです。
ちなみにラテン語は元々ローマ帝国で使われていた言葉です。現在では、世界で最も人口の少ない国バチカンの公用語としてだけ残るのみですが、「世界の道はローマに通じる」と言われたように、ローマ帝国の威光は、道を通して、言葉をも帝国の隅々にまで運び続け、ローマ帝国が滅びた後も、派生言語として、その影響が残っているのです。

担当教員:桃井 和馬

恵泉女学園大学特任教授 写真家、ノンフィクション作家 これまで世界140ヵ国を取材し、「紛争」「地球環境」「宗教」などを基軸に「文明論」を展開している。テレビ・ラジオ出演多数。第32回太陽賞受賞。公益社団法人「日本写真家協会」会員。主要著書に「和解への祈り」(日本キリスト教団出版局)「もう、死なせない!」(フレーベル館)、「すべての生命(いのち)にであえてよかった」(日本キリスト教団出版局)、「妻と最期の十日間」集英社、「希望の大地」(岩波書店)他多数。 大学では、「表現力実践講座」「国際社会論」「国際情勢論」などを担当。

桃井 和馬