多文化社会のあり方を、SF映画に学ぶ:
『ブラックパンサー』と『アバター』 国際社会学科

2020年12月08日
 投稿者:三浦萌
 ゼミ/授業名:1年春上村ゼミ

パンデミック、大学生最初のオンラインゼミ:ハラハラドキドキで始まった!

私たち1年生は、コロナ禍という時期の2020年4月に入学したため予定されていた学校行事が次々に無くなり、あるいは延期になっていきました。パンデミックの下で、情報は錯綜する中で、どのような形で授業を受けるのか、対面授業かオンライン授業か、履修登録の方法はどうなるのか。ただでさえ大学と高校の違いに戸惑い、あるいは友達はできるのかなどといった不安の中で過ごしていました。

授業では、こんなことをしました

上村先生の授業は、「映画で社会を考える」というものでしたが、その社会とは「多文化社会」のことです。一般に「多文化社会」とは、多様なグループがお互いを理解しあって、共生する社会です。しかし、このゼミでは社会を構成するグループが等しく横並びではなく、差別―支配のような縦の関係にあった場合にどう「共生」できるかを映画を通して学ぼうというもので、「ブラックパンサー」と「アバター」そして「折れた矢」などを鑑賞しながら、このグローバルな問題について考えました。今年は、アメリカで人種差別を改めて問題としたBlack Lives Matter運動が注目を集めたため、とくに「ブラックパンサー」の鑑賞では、黒人問題をより身近に感じることができました。

「ブラックパンサー」という映画は、アメリカのようなさまざまな人種や民族の共存や協力、多様性を描いた作品ではありません。むしろ、その逆のような映画でした。「地下資源を守り、外国に支配されないアフリカ」の理想を実現したワカンガという架空の国を舞台に、さまざまな黒人たちが活躍する映画です。自分たちの故郷、原点をビジュアル化するために黒人の監督がメガホンをとり、黒人のキャスト・制作スタッフも世界各地から集められた映画だと知りました。

残念ながら、主演俳優であるチャドウィック・ボーズマンさんが2020年8月29日に亡くなりました。2016年から結腸がんで闘病していたそうです。ブラックパンサーは2018年に公開された映画なので撮影中もがんと闘っていたことがわかります。そのことから、人種差別問題に何かしらの思いがあったのではないかと思いました。

アフリカから連れて来られた「奴隷」の子孫である黒人と違い、日本で生まれ育った私にとって祖先が何をしていたか、どこに住んでいたかなどにはあまり関心がありません。そのことによって差別や格差が起きることも想像しにくいです。しかし、帝国主義の下で、移動を強制させられた人たちがいたこと、彼らにとってルーツがわからないことにより、祖先の地とのつながりやなぜ今そこに自分が居るのかという問題意識が深刻であるいうことを学びました。この映画は黒人の故郷を奪った欧米諸国に向けての静かな叫びでありメッセージであると同時に彼らの願いであると私は考えました。こうした深い意識が理解されてこそ、多文化社会の土台ができるのかもしれません。

「アバター」と「折れた矢」では、もうひとつの不公正な関係である先住民族の目線で、開拓者達がどのように世界を作って行ったかを考えました。とくに「アバター」では、近未来の宇宙を舞台とすることで、現代社会の状況が描かれています。そこでは、企業が前面に立って、資源を収奪する物語が展開されています。それは、今の世界と昔の世界を組み合わせているようでした。そこから私は、社会に出る私たちがただ雇われて組織に従うのではなく、そこに住む人々のことや考えを学び、寄り添うことが大切というメッセージを感じました。

私にとって面白かったこと+ちょっと感想

私にとって、上村ゼミを通して面白かったことは、毎授業でクラスメイトの映画感想や授業内容に関する意見を聞く事でした。同年代の子たちが同じ授業を受けて同じことを思っている時もあれば全く違う解釈を聞く機会もありました。そして色々な意見を聞くことで新しい解釈に触れることができ発見があり、考えさせられることが多かったです。友達の意見を否定するのではなく、新しい意見や感想を聞くことにより、発見が増え、考え方が深まっていくことが、私にとってとても面白かったです。

さらに、私自身にとって、上村ゼミで学べたことは、映画作品に対する見方が変わったこともあります。

私は映画鑑賞が好きで、よく見に行きますが、同じ映画を一か月間何度も見て背景を学び、誰かと感想を共有するという経験は初めてでした。

上村先生の授業では一回目映画を見た感想、少し歴史を学び二回目同じ映画を見た感想、三回目...と授業進めていくやり方で、先ほどのクラスメイトの感想を聞き発見もできる機会になりました。さらに、授業を受ける前と後では、私自身の映画に対する見方が娯楽ではなく教科書や歴史を学ぶことのできる資料として観れるようになったとびっくりしています。実は今回授業で取り上げていた「ブラックパンサー」と「アバター」の二作品とも観たことがある作品でした。授業の始まる前は、ヒーロー作品とフィクション作品の二つから何を学ぶことができるのか、ちょっと心配でした。大丈夫かな、と。しかし、映画と上村先生に学ぶことは少なくありません。ヒーロー作品は本当の意味でのヒーローがあり、フィクション作品には歴史と未来を重ね合わせたメッセージがありました。もちろん、映画は音や映像を無心で見ても楽しいです。ただ、作品についてきちんと学ぶと考えが変わり、皆と共有することで新しい発見があります。映画の楽しみ方は沢山あると学ぶことができました。

初めてのゼミがオンラインの中で怠けることなく寧ろ勉強意欲が沸くゼミに出会えました。これからの学校生活、どんな発見があるのかどんなことを学ぶことができるのか、とても楽しみです。

9月の入学式での写真:やっと会えました!(右端が筆者)
ゼミで鑑賞した3作品

担当教員:上村 英明

世界にはまた日本にも、さまざまな文化や歴史を背負った人々がいます。そして、その歴史にはたくさんの理不尽なことがありました。21世紀という新しい時代に、そうしたさまざまな個性をもった人々がお互いを尊重し合いながら、共生できるかを考え、行動しています。その視点から、現代社会のさまざまな問題の本質が見えてくるかもしれません。

上村 英明

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