日本の移民の人々の生活から考える国際社会学の実践 国際社会学科

2019年07月06日
 ゼミ/授業名:国際社会/メディア・社会コース 3年ゼミ

3年ゼミの春学期は、4年生12月に提出予定の卒業論文へ向けての執筆準備の期間です。1,2年が恵泉の教養、専門基礎の習得だとすれば、ここが自分の研究を探求するスタート地点です。

国際社会学・ジェンダー論の定松ゼミでは、まず専門書を読む力をつけるために1冊の本を担当者を決めて読みます。今年は『国際社会学』(有斐閣)のテキストを使って、主に日本に住む移民について理論と実例を学んでいます。市民権(シティズンシップ)論、エスニシティ論、社会階層論、二重労働市場論、社会福祉国家論、文化資本、再生産労働の国際分業などの理論と今を生きる移民の人たちの状況を交差させて、移民の人たちの抱える悩み、制度の問題点、国家の違い、そしてみんなが生きやすい、人権が保障された社会について考えています。

実体験を重視する恵泉の学びとして、机上の空論で終わらせないために、移住者の声を聞くことが何よりも大切!ということで、6月1日に開催された「移住者と連帯する会全国大会 東京フォーラム2019」に参加してきました。矢野デービィットさんからの移住しなければなかった恐怖体験、児童保護施設での生活、サヘル・ローズさんの移住のきっかけとなったイランでの戦争、移住してからの貧困、助けてくれた「給食のおばさん」など、本のなかの平板な話が、さまざまな感情とともに押し寄せて、色鮮やかな立体的な情景をもたらしてくれました。

午後の分科会には、別々の会に参加し、韓国との女性移住者への支援策と日本の隔たりに驚いたり、DVや人身売買の被害に合った女性たちが、日本語を独学し、自分の人生を切り拓いていく姿に感銘を受けたり、子どのも支援にはまず親への経済と日本語の支援の必要性を感じたり、子どもの教育に関して在留資格の複雑さを痛感したりと、日本の移民政策の欠点、社会における寛容さの必要性、移住者の人生を引き開く勇気と努力を知った一日となりました。

東京フォーラムに参加しました!
移民研究の資料の一部です

担当教員:定松文

現在2億人以上いる世界の移民の半数は女性です。少子化、高齢化、都市化の進む国は女性も男性も働き、掃除、料理、介護、育児など誰かに頼っていかなければ生活が成り立ちません。一方、仕事がない、現金収入が必要な地域では、豊かな国の下支えの労働のために、家族を故郷に残して海外に働きに行かざるをえない人々がいます。移民は偶然ではなく、政治的経済的構造が生み出すものとして、その問題点を多面的に考えます。

定松文