恵泉ディクショナリー

友情論歴史文化学科

[ゆうじょうろん]  On friendship

友情論とは

ヨーロッパの友情論の伝統は長く、古代ギリシアにさかのぼる。プラトンは友情とは何かという問題を改めて提起して、「真の友情」の探求を始めた。これに対して、さっそく高弟アリストテレスは模範解答を提出した。真の友情とは、「善き人」同士の愛の関係であるというものである。これ以後、「真の友情」が極度に理想化される一方で、世間一般の友情は偽物とされてしまった。アリストテレス流に言えば、利益や快楽を求める関係は、真の友情からは外れているのである。真の友情が実現するのは稀有なことであるということにもなる。

やがて、恋愛との対比で語られることも多くなる。友情は恋愛に優るというのが、近代ヨーロッパの友情論お決まりの語り口である。16世紀フランスのモンテーニュも、そんなことを言っている。ここで日本近代文学史に目を移せば、恋愛と友情の相克を描いた夏目漱石の『こころ』と武者小路実篤の『友情』が思い出される。いずれもモンテーニュ流の友情論を受け継いでいる。そういえば、映画『レッドクリフ』の原作『三国志演義』には、劉備・関羽・張飛の三人が篤い友情を誓い合う「桃園の誓い」という名場面があるが、ここでは三者の友情は「義兄弟」の形をとる。ヨーロッパの代表的な議論では友情は親子や兄弟の関係に優るというのが普通であったから、友情の語られ方は文化によって異なるということになる。

2010年01月12日 筆者: 高濱俊幸  筆者プロフィール(教員紹介)

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