国際シンポジウム「海外体験学習における受け入れ側のインパクト」報告

2008年01月24日

  • 木村利人学長による開会挨拶木村利人学長による開会挨拶
  • スマリー・ワラナット氏(タイ)による報告スマリー・ワラナット氏(タイ)による報告
  • 全員での議論全員での議論

特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)の一環として、本学の体験学習の受入先の方々を迎えて国際シンポジウム「海外体験学習における受け入れ側のインパクト」を実施しました。

日 時:2007年11月11日(日) 午後1時から午後5時まで
場 所:恵泉女学園大学 多摩キャンパスJ202(東京と多摩市)
参加者数 90名(大学関係者37名:学内20名、学外17名学生30名:学内26名、学外4名一般23名)

内 容:

  • 長期フィールドスタディ受入側の報告
    ドゥシット・ドゥアンサー氏 (タイ、チェンマイ大学、長期FS受入責任者)スマリー・ワナラット氏 (タイ、チェンライ県パンラオ村在住 元小学校教員、
    長期FS受入のMaekhaowtom Aids Coordinationg Center, director)
  • 短期フィールドスタディ受入側の報告
    アブー・バセッド氏 (バングラデシュ、短期FS受入の現地NGO PAPRI専務理事)白石 文子氏 (ドイツ、ボーフム・ルール大学外国語教育研究所 日本語学科)
  • パネルディスカッション・質疑応答
    (コメンテーター)和栗百恵氏 (早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター特任講師)

報告概要

大橋学部長から、海外体験学習における問題点として、送り出し側と受け入れ側の3つの非対称性(有償・無償、体験機会、社会的・文化的影響)が指摘された。
チェンマイ大学(CMU)側として恵泉の長期FSの受入を担ってきたドゥシット氏は、長期FSを継続してきた経緯および学生の学びにプロセスを報告した上で、NGO等への謝礼を支払わずに無償の非対称性があるとしても、恵泉側は他の形(NGO基金など)で積極的な有償行為を行っていることの受入側の利点をあげ、学生の体験学習先(受け入れ先)の負担については、学生の活動事例をあげて「タイ人にもできないような行為を通して受け入れ側にも学生にとっても意味のある行為を行っている」とした。日本の経済的な力が文化的・社会的な影響を及ぼしているかは、長期的な交流を継続することによって相互理解を促進することができ、CMUにおいても恵泉との関係は好意的に受けとめられているとの報告であった。
スマリー氏は、チェンライ県パンラオ村(長期FSの第1回から毎年農村フィールドトリッププログラムとして2泊3日の滞在を受け入れている)における受入側の視点を報告した。日本の学生が村に滞在するということは、さまざまな不安をもたらすが、村でのアクティビティ(村の儀式や伝統文化、日常生活に関すること、村の中の職業、子供の教育、村人との交流)を通じて、村人も自分たちの生活様式や文化を再確認し、自己尊厳を高める機会になっていると報告した。ネガティブな側面としては、日本の若者文化(消費・商品)等が村の若者に与える影響などがあげられた。また、学生と村人にとっての大きな学びになっているこうした村における体験学習の経験や情報が、CMUや恵泉に十分に伝わっていないのではないか、もっと積極的に評価すべき、との提案もあった。
バングラデシュFS受入側のNGO「PAPRI」の代表のバセッド氏は、昨年発生した事故(日本の学生グループを受け入れ、調理中に火災が発生し、受入側の2名が死亡)について、その原因やその後のフォロー、この事故を通して考えたことを率直に話してくださった。受入側には保険等はなく、客を受け入れる際のリスクを負っていること、しかしこうした事故にも関わらず、より深い相互交流、相互理解が求められる、と報告した。
ドイツFSの受入側の白石氏(ルール大学外国語教育研究所日本語学科)は、十分な事前学習と基本的な自己管理能力の必要性を指摘された。

シンポジウムの成果

受入側の率直な指摘を受けることで、受入側との相互理解を深めることができたことは大きな成果であった。また、FS参加学生、参加予定学生が受入側のインパクトを理解することで学びを深めることとなった。更に受入側参加者の相互交流により、本学の体験学習に対する理解を深めることができた。

今後の事業への反映

事前学習プログラムの中に、受入側のインパクトについて説明する時間を設け、インパクトを軽減するための教育を行う。また、受入側の相互交流の機会を積極的につくり、受入側と本学及び学生がともに成長発展するプログラムを展開することが検討されている。
2008年度には長期FSの受入先から村人を招き、本学学生とともにコミュニティ・サービス・ラーニングを体験し、相互理解を深めることを計画している。
以上