ヨーロッパ

「ドイツの心臓」の新たな鼓動‐ツォルフェルアイン

2012年11月14日

「ツォルフェルアイン」とは何か。日本語に訳せないことはないが、なまじ訳してしまうと却って混乱をまねくので、固有名詞と思っていただきたい。実態は炭坑である。1986年まで操業していた。それを産業遺産として博物館化し、往時の有り様を伝える施設としたのである。ただし実際の坑道に入ることはできない。この地域の炭層は深く、地下1000m以上に及ぶ。到底、一般の立ち入れるところではない。

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あこがれのローマ―17-18世紀ヨーロッパのモデル都市(ローマの歴史的中心部とその都市で治外法権を有する教皇庁の地所、そしてサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂)

2012年10月29日

ローマのモニュメントといえば、コロッセオや凱旋門など、古代に作られた建造物を思い浮かべるかもしれない。しかし、それらは古代から現在までずっと大事にされてきたわけではない。西欧中世においては、古代ローマ時代の遺跡は異教の事物であり、保護に値するとは考えられていなかった。発想の転換がもたらされたのは、古典古代に学ぶようになるルネサンス以降のことである。

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カンピドリオ広場

レオナルド・ダ・ヴィンチの世界遺産―レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院(イタリア)

2012年10月09日

西洋美術を代表する画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの代表作は何だろう。おそらく、多くの人はパリのルーヴル美術館に所蔵されている《モナ・リザ》を思い浮かべるだろう。しかしながら世界遺産として登録されている彼の作品は、ミラノの《最後の晩餐》だけである。近年、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』などによって知名度は上がったとはいえ、さりとて《モナ・リザ》には未だ及ばない《最後の晩餐》が、世界遺産に登録されている理由はどのようなものだろうか。
「レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院」という登録名が示すように、ユネスコの世界遺産リストに登録されているのは《最後の晩餐》という美術作品だけでなく、作品が描かれた修道院および付属の教会を含むものである。同時に、世界最多の登録数を誇るイタリアの世界遺産のなかでも、唯一特定の画家の名を含むものであり、西洋文化におけるレオナルドの存在の大きさを感じさせる。

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レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》

モン・サン・ミシェルとその湾

2012年09月18日

海のなかに突然避雷針が飛び出したように、粛然と姿を現すモン・サン=ミシェル。フランス西北部のノルマンディー半島の付け根ちかくのモン・サン・ミッシェル湾の干潟にある。雄大な自然の中に圧倒的な存在感をもって現れる建造物は、数ある世界遺産のなかでもマチュ・ピチュと並び人々の心を捉えてやまない。
このモン・サン=ミシェルはフランス語で「聖ミカエルの山」を意味し、モンは山、サン=ミシェルは旧約聖書にその名が記され、守護聖人としても有名な大天使・ミカエルのフランス語読みである。

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天国の明るいイメージ‐ヴィース巡礼教会

2012年08月20日

ロマンティック街道、メルヘン街道と言えば聞いたことがあるだろう。○○街道というのはドイツの観光ポイントを結んだルートで、幾つもある。その一つが南ドイツ・バロック街道。これは日本ではあまり知られていない。が、なかなか面白いコースである。この街道を車でたどって行くと、なだらかな起伏のある草原の真っただ中に、あるいはちょっとした谷間や小さな村に、忽然とかなりの規模の建築物が見えてくる。近づいてみるとそれは教会、または修道院である。外側は白や黄色の明るい色。中に入ってみると、これまた白と金色そして水色を基調とした驚くほど明るい空間。白と金色を多用した明るい色調はバロック様式の特徴の一つなのだが、教会とはこんなに明るいものなのか、いや、きっと天国はこんな風に明るい光にあふれているのかもしれない。そんな気持ちになってくる。それにしても、こんな周りに何も無いような所に......

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ヴィース教会外観