ハンザの夢の跡(ブリッゲン、ノルウェー)

2013年08月26日

ノルウェー南部の街スタヴァンガーからベルゲンへ行く最も早い交通手段は船である。スタヴァンガーからベルゲンは地図で見るとさほど遠くないし、完全な陸続きである。ノルウェーにだって鉄道も道路もある。それなのに何故、船が最速なのか?理由はフィヨルドである。ノルウェーの西海岸には深く切れ込んだフィヨルドが連なる。そしてフィヨルドの両側は切り立った岩山であるため、陸路は大変な廻り道とならざるを得ない。だからフィヨルドの外海を突っ切って進む高速船で行くのが一番早いのだ。

鏡のような水面のフィヨルドから外海へ出ると、当然ながら波がある。その波を切って進む高速船の乗り心地は、船というよりバスに近い。やがて1つのフィヨルドに入って行くと、ベルゲンの港が見えてくる。黄色、オレンジ色、白・・・色とりどりの小じんまりした切妻屋根の建物が並んでいる。ブリッゲンだ。大半は羽目板を横に張った木造家屋である。実はノルウェー等北欧には木造建築が多い。教会も木造のものがある。材は主にモミ。ヨーロッパ都市の建物は、石造、レンガ造り、木材を使うとしても木骨建築なのであるが、街中にこれだけ木造建築が多いのは特徴的である。

ブリッゲンとはベルゲンの港に面した一画で、ここにドイツ・ハンザの商館もある。ベルゲンのものは4大ハンザ商館の一つであるが、これも意外なほど小さい。中世、冬季には北の海を航海することはできなかった。ハンザの男たちは、ここで厳しく長い冬を過ごしたのである。12世紀から15世紀、ヨーロッパの北の海は彼らの独壇場であった。西はロンドンから東はロシア、北はこのベルゲンから南はリューベックを中心とするドイツ諸都市、北海とバルト海にドイツ・ハンザの船が行き交った。やがてイギリスやオランダとの競争に敗れ、ドイツ・ハンザは衰退して行く。ベルゲンのハンザ商館はまさしくハンザのつわものどもの夢の跡である。

ブリッゲンの背後も険しい岩山である。ロープウェイに乗って、山の上から港を見下ろすことができる。その眺めが似ているのだ、山の上から観た小樽の港に。もちろんベルゲンの風景の方が雄大であるが、北の港は似るものなのだろうか。

川戸れい子(ドイツ近現代文学)

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