カウンターだより

本に囲まれて過ごす図書館スタッフの、日々のつぶやきです。感想は直接カウンターまでどうぞ。

宿根草 × 恵泉らしさ

2026年09月17日

 少し前の話になりますが、夏休み中の8月15日、図書館のSさんと共にJR茅野駅からバスに乗り、恵泉蓼科ガーデンの特別公開に参加してきました。標高が高く、澄んだ空気がとても気持ちの良い場所です。
 見学の前にはガーデン長の小澤さん(短大園芸科卒)によるスライド上映と、ガーデンの経緯やゆかりの方々の紹介、季節ごとの庭の様子などのお話があり、初めて訪れる人でも楽しみながら背景を知ることができます。
 とりわけ印象的だったのは、小澤さんが28年前に着任された時のエピソードです。上司に言われたのは、「恵泉らしく、よろしくね。」のたった一言。それでも卒業生にはなんとなく伝わるらしく(!)、ガーデン設計者の百瀬和子さんによる英国風の「自然そのままの美しさ」を基礎としつつ、植え替えたばかりのバラのつぼみが一晩で凍って枯れるほど厳しい寒さへの対応や、少し掘るだけで石がごろごろ出てくるような土壌の改良などを通じて、華やかな美しさではなく、八ヶ岳の風土に根付く自然に習った植栽へと整えていかれたそうです。
 とはいえ、「自然そのまま」に見せるためには程よく「人の手」を入れる必要があります。そこでポイントになるのが宿根草を用いること。生長して花が咲き、枯れ、また芽吹くというサイクルを見せながら、一年草では花の時期が終わるごとに植え替えるプロセスが不要になり、水やりもある程度は雨にまかせられるようです。
 宿根草は大学の花壇にも多く植えられています。『恵泉女学園大学 ガーデンガイドブック』(095/K)で大学の庭も百瀬さんの設計と知り、以前より蓼科を身近に感じるようになりました。余談ですが、園芸の授業教材にも使われる宿根草の苗は、余った時だけ学内販売されます。園芸店でもあまり見かけない苗のラベルには学名しか記されず、和名や花の姿、育て方を調べることから始まる買い物を楽しんでいます。
 東京へ戻った数日後、ふと図書館スタッフCさん(卒業生)に「恵泉らしさって、何?」と聞いてみました。すると、少し考えてから、自然な美しさを大切にする点や、困難をあまり深刻にとらえ過ぎずに挑戦するポジティブな態度などを教えてくれました。
 創立者の河井 道先生が蒔かれた種も、宿根草だったのですね。いつの時代も、卒業生たちの心の中に根付いた「恵泉らしさ」は生き続け、その人を支えています。それを目の当たりにして、蓼科ガーデンの一角にある百瀬メモリアルガーデンに足を踏み入れた時と同じくらい、静かに胸を打たれました。(N)


蓼科ガーデン.JPG