柿の木

今年も11月に入り、よその庭先などで柿が実っているのをよく見かけるようになりました。
毎年この時期になると思い出されるのが、昔実家の玄関の目の前にあった一本の大きな柿の木です。何も手入れをしなくても、この時期になると甘い柿がたくさん実りました。毎週のように高枝切り鋏を持って採ったり、採った実を受け取ってカゴに入れたりと、わが家にとってこの時期はとても忙しいものでした。採るのが間に合わないと、熟れた柿が道にべちゃりと落ちて悲惨なことになることもありました。なので急いで採るのですが、当たり前のようにたくさんの柿が一度に食べ頃になるので、採るのにも一苦労でした。高枝切り鋏で切って掴んだまま慎重に下すのですが、意外と重く、猿蟹合戦のように落ちてきた柿が当たれば怪我をしてしまうので、落とさないかと冷や冷やしたものです。
ご近所にもたくさんお裾分けをしましたが、それでも減らずに毎年食べきるのにも苦労した記憶があります。この時期は、美味しく実ったものがわかるのか、鳥もよく姿を現すようになり先を越されることもしばしばでした。今思うと、私たちが食べきれないのを協力してくれていた有難い存在だったようです。
柿の木は私が生まれる前からあり、小さい頃は木登りをしたり、樹の幹に登ってきたセミの羽化を見たりと思い出深い木でしたが、道の整備の関係で切ってしまい、今はもうありません。その後は、柿を買う習慣がなかったこともあり食べる機会がぱったりとなくなっています。毎年のように食べる時期を逃しているので、今年こそは食べよう、と実っている柿を見て密かに決意したのでした。(C)