「最近読んだ本」

 

   『図書館司書と不死の猫』というのがその本のタイトルです。姉の突然の失踪。その後に残された飼い猫は言葉を喋る不死の猫。この猫が時を越えて出会ってきた人間たちは謎の死を遂げている。姉を必死に探す男がこの「謎の事件」を記録したフォルダが、主人公アレックのもとに添付メールとして届けられます。彼は妻を突然亡くし、リタイアしたばかりの元大学図書館司書。突然のメールに初めは理由も何もわからず自分とは全く無関係だと思っていたその事件には恐ろしくおぞましい過去の真実があり、彼も次第に予測不能の事態に巻き込まれていく・・・というミステリーホラーストーリーなのです。届いたフォルダの中の記録を読むという形で物語ははじめ一種の「入れ子」の形をとっているのですが、その「入れ子」が次第に崩れてゆき、アレック自身にも身の危険が迫ってくる過程がとてもスリリングです。喋る猫が登場するというとファンタジーの様ですが、ストーリーの緊迫感の中で全く違和感が無く、またこの猫がなかなかの「役者」なのです。かといって猫好きの人におすすめかというと微妙かも。この小説では猫はかつて様々な邪悪で強力な魔力を持っていたがそれを悉く奪われたのが今の猫という生き物の習性であり性格なのだ、という設定になっているのです。たとえば人間の背中などに乗って前足で交互にもみもみする一見とても愛らしい猫の動きも実はもともとは邪悪な力を発揮するときの恐ろしい動作に由来しているのです(あー怖い怖い)。

登場人物の性格や語り口など随所に独特のユーモアが感じられ、読んでいると親しみの湧いてくる作品でもあったのですが、やはりホラーな展開は最後まで読んでしまわないと安心できず、久々に読むのが止まらない体験をしました。(A)