「万引き家族」

先日映画「万引き家族」を見ました。暗闇で解放されるのか、わたしは映画館で映画を見ているとき結構よく笑ったり、泣いたりする方なのですが、この映画ではそのどちらも無かったというのが自分でも意外でした。そのかわりというか、映画を見た日に帰宅してからシャワーを浴び髪を洗おうとしたときに、下を向けないくらい首と肩ががちがちになっていることに初めて気づいて驚き、どんな姿勢で見ていたのだろうと思ったのですが、思い出してみると映画のあいだ中、目の前で起こって進行していくことの有様をひたすら息をつめて見ていたという気がします。

この映画について前もって知っていたストーリーやテレビでの広告から得たイメージと、映画を実際に見たときの印象はとても違ったものでした。どう違ったのかというのは一言で言い表すのは難しいです。ですが映画を見た後に映画雑誌に掲載されていた是枝監督と出演俳優のリリー・フランキーさんとの対談を読んでみると、監督が、まだこの映画とうまく距離をとれていないと語っていたり、台本を読んだときは泣いたけど、出来上がった映画は全然別のものになっていたというリリー・フランキーさんの言葉は印象的でした。監督や演じる立場の人と、出来上がったものをただ見る側では映画に対する理解も感覚も深さや視点で大きく異なるのだと思いますが、思っていたのと違ったというのはこの映画のキーワードの一つような気がしたのでした。

またとない体験ができる映画であることは間違いない様です。        (A)