グローバルに生きる

船上1500人の旅を支えて世界2周を経験
SEを経て憧れの仕事に転身

中村 美沙さん

株式会社ジャパングレイス 海務部 ピースボート STORE 管理
中村 美沙さん

― Profile ―

人間社会学部 国際社会学科 2011年度卒

2012年、ITベンチャー企業に入社。システムエンジニアとして外資系企業のシステムを構築するプロジェクトリーダーを経験。2017年、退職。同年、世界約25ヵ国を訪れる船旅「ピースボート」の運営会社、株式会社ジャパングレイスに入社。現在、乗客&クルー1500人、100日分の食材の仕入れ、管理を担当。

父が病気で倒れたことがきっかけで
世界で使えるスキルを身につけようとS E に

 父親が船の機関長をしており、いろいろな国の人と仕事をしている姿に小さいころからとても憧れていました。私も世界で働きたいと思い、大学では国際社会を勉強しましたが、大学2年時に同居していた祖母が亡くなり、駆け付けた父親も脳梗塞で入院。経済面と家族で父のリハビリをサポートしなければいけないという理由から、長期的に海外に行くことはいったん諦め、世界のどこでも使える技術を身につけようとシステムエンジニアを志しました。

 文系からのエンジニアなので独学でSEについて勉強しましたが、最初の3年は誰でもできる仕事をするしかなく、やりがいが感じられず、周りが転職、結婚という第2の道を歩んでいく様子を見て悩む日々。しかし、一念発起して自分の実績となる仕事がしたいと会社に伝えたことで、関心のあった外資系企業のシステムに関わる仕事に携わり、スキ ルも上がり、チームにインド人がいたことから、仕事で英語も使えるようになりました。

 最終的にプロジェクトリーダーを務め、達成感を得ることができ、父親の体調も安定したことから夢に向かって転職を決意。パソコンのスキルや英語力、リーダー経験をアピールし、憧れの船の仕事に就きました。

インドネシア人の同僚たちと連携し
快適な船の旅ができるよう約100日分の食材を管理

中村 美沙さん 現在は世界をまわる客船「ピースボート」の中で食材や消耗品備品を仕入れて管理する仕事をしています。お客様約1100人、クルー約400人、100日間分。和食の調味料などは日本から積み、世界の各港でそこでしか得られない食材の買い付けなどをしています。お客様と接する機会がない裏方の仕事ですが、陸から離れてしまうと途中で補給することができないので、数を計算して大きな冷蔵庫で温度管理などを厳密にコントロール。SE時代の数学的知識が役立っています。乗船している全員が快適に生活するために重要な仕事です。

 8 〜10人の部署ですが、私以外は全員インドネシア人、女性は私のみ。文化が違うので、適切なコミュニケーションを取る必要があります。お互い母語ではない英語で話しているので、少しの食い違いが大きなトラブルにつながります。食材がきちんと準備できているか、まめに確認。一度乗船すると約3ヵ月間、連続すると半年程船の上で過ごすこともあるので、互いに連携を取りつつも、プライベートや宗教上のことには踏み込みすぎないよう適度な距離を心がけています。また、国によっては傷んだ食材が届いたり注文したものと違っていたりとイレギュラーな事態が発生することも。そのときこそ腕の見せどころ。今ある食材でなんとかできないか、シェフと相談しながら調整します。

中村 美沙さん 英語を使いながら各国の人と仕事をし、いろいろな国に行けることにやりがいを感じます。今の時代はネットで調べれば海外の情報を得られ、現地の製品を買うこともできますが、自分の目で見て経験することは自分しかできません。他人のレビューとは違って自分というフィルターを通すことで、全く異なる感じ方をすることも出てくると思います。そんな経験をする度にこの仕事をやっていてよかったなと思います。

6歳から続けてきた日本舞踊を生かし
世界に日本文化を発信したい

中村 美沙さん

 大学1年生の夏に南米研修でペルーとボリビアに行きました。ホームステイをして語学学校でスペイン語を学び、マチュ・ピチュや日系の方が住んでいる村、JICAの施設にも行きました。実際に現地に行くと、たとえば急なトラブルが起きたときもスペイン語を使って自分でどうにか解決しなければなりません。日本とまったく違った感覚はとても衝撃的でした。帰国後も勉強のためスペインバルでアルバイトをしたおかげで、今も観光では問題なく会話ができています。興味があることに対しておじけることなく挑戦できているのは、恵泉での経験があってのことだと思います。

 今後、チャレンジしたいことは、世界で日本の文化を伝えること。6歳から日本舞踊を習っており、師範の資格を取得。日本にいる間は週1回は稽古をし、月に2回、児童館の子どもたちに日本舞踊を教える教室のサポートを行っています。もう少し仕事に慣れて余裕が出てきたら、一緒に働いている仲間にも私が踊っている姿を見せたいです。

― Message to Students ―

大学4年間は結構長い。周りが受験しているからと流されるのではなく、進学前にどんな大学生になりたくて、どんな経験をしてどんな仲間をつくりたいか、自分と向き合って考えてみるといいですよ。私のモットーは"やらない後悔よりもやって後悔したほうがいい"。チャレンジしたいことがあって悩んでいるなら一歩踏み出す勇気を出すといいと思います。恵泉は教員と学生との距離が近く温かみがある大学。一人ひとりを尊重してサポートしてくれると思います。