平野秀樹著 新潮社(334.6/H)
知らない間に、日本の土地が外国資本によって買われていく。本書は、それが如何に危険なことであるか、幾つかの実例を挙げながら、こうした動きに警鐘をならす。私たちも、自国の土地に対して余りに無関心ではなかったろうか。それにしても、持ち主不明の土地が日本にこれほどあったとは。国は、この問題に対処するため、土地所有者を調査することから始めて欲しい。(Y)
鳥越皓之著 吉川弘文館(219.9/T)
幕末の琉球を舞台にした池上永一の小説『テンペスト』を読んだ向きには、特におすすめ。物語は明治初年の琉球処分を以って終わるが、その後の沖縄は、また、沖縄の人たちはどうなったのか。
ハワイにわたった移民一世の貴重な証言も交えて語られる。(Y)
深沢真太郎著 日本実業出版社(336.1/F)
正直に告白します。私は数字が大の苦手です。データはすぐ忘れます。たとえ好きな小説を読んでいても登場人物が少しでも数字を並べて説明するような場面があると飛ばします・・・。でも世の中、データがあふれ、それに惑わされないようにするためにはまず「敵」を知らなければ。この本では数字に強い理系女子と直感勝負の文系男子のストーリー仕立てで数字を使うことの意味をわかりやすく説明している。キャラクター設定はステレオタイプかもしれないが、当然ながら「私は文系だから」という言い訳は通用しない(自戒をこめて)。(M)
森達也著 ダイヤモンド社(304/M)
正論のように聞こえる意見、善意から行われた行為、こうしたことに異を唱えることは難しい。この長いタイトルもそうだが、目次を眺めると、ある意味「刺激的」なフレーズが並んでいる。そしてそこに書かれていることはどれも思いもかけない角度から私の考えを打ち砕く。例えば「たまちゃん」(もう忘れられているか?)を食べようなんて言えるだろうか?この本の表紙にはヘッドホンをして耳をふさいでいる(多分目も見えていない)たくさんの彫像がデザインされているが、この中の一人は私だ。(M)
本間龍著 亜紀書房(539/H)
3.11直前までの40年間、メディアを席巻し続けた原発広告の検証を3.11後の今、著者は試みる。掲載されている250件にのぼる広告例は、どれも見栄え良い写真、親しみやすいメッセージ、綺麗なイラスト。新聞広告は、常に紙面5段抜きは当たり前、間違いなく、目に入っていた筈なのに、今見ても不思議なほど記憶に残っていない、という事自体が、その浸透力の証なのだろうか。それこそ、莫大なコスト(2兆数億円)に見合った成果ということなのかもしれない。(A)
渡邉格著 講談社(673.7/W)
「腐る」という自然の摂理。一方永遠に腐ることなく、実体の有るか無しかの「あわい」で増殖し続ける「おカネ」。「食へのこだわり」さえ「おカネ」に操られ、食い尽くされかねない。そんな経済システムから脱出し、著者は利潤と訣別した「田舎のパン屋」を開業する。「田舎パン」好きなら涎が出そうなパンたち(の写真)。パン種、製粉、全てに手をかけ焼かれるパンの値段は確かに「高価」かもしれないが、この本ではそれを高いと感じる読者の感覚そのものが問い返される。あなたはこのパンを買いに行きますか?。 (A)