ブレンダ・ラルフ・ルイス著 原書房(367.2/L)
第二次大戦中、戦場に送り出された男性に代わり、女性達(本書では主にアメリカ、ヨーロッパ)の活躍は様々な分野に拡大した。パイロットや記者、カメラマン、軍隊、諜報部員まで、それまで男性が専ら従事してきた職業、任務につく初めての「チャンス」が戦争であった、というのも皮肉な感じがするが、戦時中の体験により女性が獲得した新たな能力の発見と自信が、1960年代の女性解放運動の原動力にもなったという。沢山の写真、多種多様な女性像が描かれたポスターもとても興味深い。(A)
ルーシー・ワースリー著 NTT出版(233/W)
寝室、居間、台所という現代人の日常とも切っても切れない空間の「変容」をイギリスの過去から現代まで辿っていく。「当たり前なこと」の「変容史」とでもいえようか。例えば枕、シーツなどの今の「ベッド」では当たり前のもの達も、それ自体「無い時代」や「抵抗感を感ずる時代」があったし、当然その逆パターンもありえた。「焼き串回し犬」もその一つ。何なのか興味のある方は、本書「台所の歴史」の部をご覧下さい。(A)
丸山里美著 世界思想社(368.2/M)
駅の連絡通路で、公園で、ひところよりホームレスの姿を見なくなったような気がする。長引く不況でその数が減ったとは思われないので、たまたま目にしないだけかもしれないが。ホームレスの多くは男性であるが、3パーセントは女性なのだそうだ。本書は、彼女たちがホームレスになった経緯、その実態について解き明かしていく。その存在を知りながら、敢えて目を閉じていることに気づかされる。(Y)
ちきりん著 文芸春秋(366/C)
人は学校を出たら多くの場合何らかの仕事につくことになる。いつまで働くか、どんな働き方をするか、それぞれの事情により様々である。年金支給開始年齢の引き上げや、65歳定年延長が取沙汰される中、これからの社会にあった働き方とは何か、ヒントを与えてくれる一冊。(Y)
森まゆみ著 平凡社(367.21/M)
考えてみてください。学生の皆さんとほぼ同世代かちょっと年上くらいの女性たちが、まだ女の子だけで遊びに行くことすらできないような時代に集まってわいわいと雑誌を作ってしまった・・・。すごいと思いませんか?お金は?女のくせに、といったバッシングは?そしてまた、当然のことながら、そこには対立もあり、もうやめた、と放り投げてしまうような人もいて・・・。著者は自分でも女性3人で雑誌(略して『谷根千』)を発行していたのでその体験に基づいて、時にはちょっとクールな眼差しで批判しつつ、『青鞜』の誕生から終焉までを愛情をこめて語る。(M)
平川克美著 ミシマ社(332.1/H)
タイトルだけ見ると「商売の本?」と思ってしまいそうだが、そうではない。著者は戦後の日本社会の変化を追いながら経済成長を求め続けた結果がどうなったかを丁寧にわかりやすく分析する。人間だけでなく社会もいつまでも成長し続けることはできない。「小商い」とは「もっともっと」という拡大志向とは反対で、存続し続けることに意味を見出すものだ。最近やたらと「強い経済」というようなフレーズが目について何かもやもやした気分だったが、本書を読んでそれが整理された感じがする。「人間とは本来、小商い的存在」。タイトルからビジネス書か、と誤解して敬遠しないで。(M)