木村英昭著 岩波書店(543.5/K)
東日本大震災による大津波と、福島第一原発の大事故。この、1000年に一度という未曾有の事態に、官邸や東電はどう対応したのか。事故から2年を経てなお、未だ国によってきちんとした検証がなされているとは思えず、そうした意味でも、貴重な一冊である。(Y)
鬼頭宏著 吉川弘文館(210.5/K)
今を遡ること数十年前、中学校の歴史の授業では、江戸時代の評価は芳しくなかった。鎖国により文化が停滞し、一揆、飢饉が頻繁に起こったとも。しかし、だいぶ前からこうした否定的な見方は変わってきている。現在地球規模で大きな問題になっている環境への取り組みについても、日本は当時の世界の中でかなり進んでいたことがわかってきた。私たちは謙虚な姿勢で先人に学ぶことが必要であろう。(Y)
五十嵐泰正+「安全・安心の柏産柏消」円卓会議著 亜紀書房(611.4/I)
千葉県柏市は東京への通勤圏にあり、東京で働く人々が多い街というイメージだが、近郊農業が盛んという別の顔も持っている。そんな柏で生産者、消費者、飲食店などの業者が安心安全な地産地消を目指して話し合い、結びつきを深めてきた。ところが福島の原発事故によってこの関係が壊れそうになる。せっかく築き上げてきたものを失いたくないという思いから「安全・安心の柏産柏消」円卓会議が発足した。様々な立場の人たちが、お任せではなくみんなで放射能問題という難題に取り組み、どうしたらいいのかを模索した報告である。(M)
佐伯順子著 NHK出版(367.21/S)
日本最初の美人コンテスト(明治24年)の参加者はみんな芸者だったそうだ。当時はどんなに「美人」でも、一般女性がそのようなものに応募して人前に顔をさらすことは難しかった。明治40年になっても兄が内緒で応募して1等になってしまった女子学生が学校で問題となり退学せざるを得なかったほどである。一方で、メディアはいわゆる「美人」ばかりではなく、一人の人間として新しい時代を生きる女性たちも取り上げるようになった。才色兼備あり、良妻賢母あり、「新しい女」あり、と様々な女性像が登場する。新島八重ももちろん! (M)
マーラ・ヴィステンドール著 講談社(334.3/H)
男女の「産み分け」をコントロール出来る技術を人間が手中にしてからの数十年間に、男女の「出生性比」が自然な均衡を保っていたならば生まれていたはずの1億6300万人の女性が、アジアや東ヨーロッパにおいて減少したという。女性が減れば「希少価値」として女性が大事にされるかと言えば、話はそんな単純なことでは無く、自国の女性の減少した分、他国から売春婦として、若い女性が誘拐されるなどのケースも増しているという。「産み分け」の様々な動機が、結果的には女性の減少をもたらし、さらに女性の新たな不幸を招いていく。悲しく恐ろしい現実世界のシナリオはどんな終わりを迎えるのだろうか。(A)
富山洋子著 ジャパンマシニスト社 (498.54/T)
日本消費者連盟の創立にも係わってきた著者は、40年以上も前から、食物の安全性に取り組んできた。この本で挙げられている食品添加物や遺伝子組み換え作物などは、今では広く知られている物もあるが、それは正しく著者の長きにわたる取り組みの結実に違いない。「こどもたちにつなぐ」で始まるタイトルには『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』という子供の健康にかかわる雑誌編集にも携わってきた著者の、子供達と未来への眼差しが感じられる。(A)