宮崎日日新聞社著 農文協(649.5/M)
宮崎県で「口蹄疫」と名の家畜伝染病が発生したのは、2010年の春のこと(それまで、この病気の名前を知らなかった)。あっという間に県全域に広がり、約30万頭の牛や豚が処分された。当時の模様はニュース等で繰り返し放送されたが、畜産農家の苦悩や動物たちのことを思うと胸がふさがれる思いであった。場所、経緯は違えど、東日本大震災の原発20キロ圏内に取り残され、処分された家畜の姿が重なる。口蹄疫は今後いつ起こるやも知れず、本書は、後々までも貴重な記録となるだろう。(Y)
太田康介著 飛鳥新社(645.6/O)
本書は、原発20キロ圏内に残された動物たちの実態に迫った『のこされた動物たち』(昨年7月上梓)の続編ともいうべきものである。あれから、彼らは、如何にして東北の厳しい冬を乗り越え、或いは命を落としたのか。掲載されたたくさんの動物たちの写真が、過酷な現実を物語っている。読んでいて非常に辛い本だが、是非一人でも多くの方に手に取って頂きたい。なお、著者は、現在も被災地の動物救助活動を続けており、自身のブログでほぼ毎日現況を伝えている。(Y)
斎藤環・畠中雅子著 岩波書店(304/I/838)
引きこもりの青少年が高年齢化し、平均年齢が30歳を超えてしまった今、「いかにして生き延びるか」は重要なテーマとなりつつある。引きこもりの問題に、主に経済的な視点から検討と対策を試みた本です。(T)
青山・国連大学前ファーマーズマーケット男子野菜部著 幻冬社(626/A)
「虫くい野菜のほうがおいしい?」など30の質問に答える形で書かれていて、とても読みやすく、おいしい野菜の選び方などお得な情報が詰まっている一冊です。(T)
郷田マモラ著 河出書房新社(327/G)
裁判員制度が始まって3年余。賛否両論あったものの、ともかくも定着した感がある。そろそろ自分も選ばれるのだろうか。備えは全くできていないと思う。わからないことばかりだし、そのせいもあって不安が大きい。著者は漫画家として、裁判員になった若者が自分の悩みも抱えながら務めをはたしていく物語を書いている。人を裁くことができるのか、どんな償いが妥当なのか、どれも、答えの出せない問いであるが、人を裁くには「想像力」が必要だと著者は主張している。(M)
彩瀬まる著 新潮社(916/A98)
著者は埼玉に住む作家である。気ままに一人旅をしていて常磐線新地駅で震災にあった。誰も知っている人のいない見知らぬ土地。ぞっとするけれど、誰にでも起こりうることだ。状況のわからないまま、流れてくるニュースや防災放送に振り回され、その中で「情報は操作されている」と悟る。著者は旅人であるがゆえに家に帰れたが、数ヵ月後ボランティアとして再訪する。その直前に感じた原発への恐怖を突き詰めて考えて、現地の人たちは様々な不安を「とうの昔に腹へ押し込んで」そこに住んでいるのだと思い至る。薄めの本ではあるが、多くの人の叫びに満ちている。(M)
ジャン=ピエール・ランタン著 産業図書 (402./L)
「科学をその成果としてではなく、おかされた誤りを通じて見ていく」(訳者のあとがきより)いわば裏側から見た科学史。ナチス科学、人種主義的科学のような科学の「誤り」を根源とする悪夢の様な歴史上の「過ち」を暴くのにも容赦しない著者ではあるが、基本姿勢は肯定的。科学の「誤り」とは、本来その後の成長のための豊かな土壌であり、「創造性の源泉」なのだと積極的にとらえている。(A)
ゲルトルート・レーネルト著 中央公論美術出版(383.1/L)
ルノワールの絵の女性が着ているドレスと、現代の女性の着るスーツやワンピースには、どんな接点があるのだろうか?「ファッション」という言葉が「新しい流行」という、今日的意味合いが強いのに対し、「モード」という言葉の概念はより広く、時代を問わず服飾や「流行」について述べる時にも使うことができる。著者は、古代から現代までの「モード」を一貫した幾つかの視点で辿っていく。その視点は、一見それ以前とは全く違う雰囲気の現代の「ファッション」をも包括してぶれることがない(訳者の解説より)。「絵でたどる」というタイトルどおり、ほぼ毎ページある総数250点もの美しいカラー図版を見るだけでも楽しい。 (A)