泉麻人編著 学研(382.13/K)
今からおよそ80年前、大正の終わりから昭和の初めにかけて、「考現学」というユニークな調査・研究をしたグループがありました。銀座や新宿の街角で通行人の服装、動作などを細かく観察してその階層を推理したり、店舗の様子をスケッチしたり、公園のベンチで昼寝する人やカフェの女給の部屋などその時代の断片をリアルに記録するという試みです。「三越マダム尾行記」などという章もあり、挿絵もたくさんあるので、読んでいて楽しくなりそうな本です。(T)
石川徹也著 彩流社(384.3/I)
過疎や高齢化で日本の山が荒れている、とはよく耳にすることである。クマ等の野生動物が餌を求めて頻繁に人里へ姿を現すようになったのもそのためであると。また、台風が襲来すると山崩れが起こって、甚大な被害をもたらすこともある。普段街中に住んでいると、日本は山国であり、古来から山との深い関わりの中で生きてきたことを忘れているしまっている。日本人にとって山とは何かを、改めて考えさせられる一冊。(Y)
末國善己著 文芸春秋(910.26/Su16)
「歴史上の人物が歴史小説の中でどのように取り上げられてきたか」(あとがきより)について書かれた本である。某テレビ局の大河ドラマ等でも頻繁に登場する、豊臣秀吉や徳川家康といった超有名人のほか、石川五右衛門のような人物も俎上に乗せて、単なる過去の話としてでなく、今時の世情とも絡めて論じている点が興味をそそられる。(Y)
高木侃著 柏書房(210.02/T)
古文書(こもんじょ)の学習を1から始めてみたい、と考えている人のための本です。筆文字のくずし字を読んでみたいと思われる方に最適の1冊だと思います。(T)
村上リコ著 河出書房新社(233.06/M)
英国もの、特にヴィクトリア朝の小説のファンにとってメイドは気になる存在だろう。かくいう私も。当時の働く女性の大多数を占めていたメイド-あるときは主人公の忠実なる友、あるときは田舎から出てきた純朴な娘、かと思えば悪意に満ちた敵。どんなに物語の中で活躍しても最後には消えてしまう。「普通の」メイドたちはどんな日々を送っていたのだろうか。これを読めば英国ミステリーはもっと面白くなる!(M)
須田慎太郎・写真、矢部宏治・文 書籍情報社(319.8/Y)
基地や軍用機などの「ごつい」写真満載なだけでなく米軍保養施設内のレストランや米軍関係者用ゴルフ場の写真などもある。また解説文も歴史や現在の情勢分析はもちろんだが、ブックガイド、詳しい地図など、まさに至れり尽くせりの1冊である。タイトル通り、沖縄を知らない本土の人間である私はいまさらながら沖縄という小さな島(もっともっと小さい離島にも)に軍関係施設がひしめき合っている事実を思い知らされる。 (M)
エステル・ゴンスターラ著 今泉みね子訳 岩波書店 (543.5/G)
これまで世界で起こった「原発」「核兵器」にかかわる重要な事件や世界の地域ごと、各国ごとの様々な統計をとても分かりやすく視覚化している。一見すると絵本の様な体裁だが、巻末に用語解説もついており、原発、核兵器などの世界の現状について基本な理解が得るのにうってつけな「入門書」となっている。(A)
ダグラス・アダムス、マーク・カーワディン著 みすず書房(482/A)
「世界一珍しくて、世界一絶滅の危機に瀕している動物を見に行く」事を目的とした旅行記。その余りの凶暴さ、あるいは余りの人間臭い動きに、眼前の動物たちをつい擬人化してしてしまいそうな自分を戒める著者の姿が印象的。動物の「凶暴さ」も「可愛さ」も人間の内面の投影にすぎず、実は動物本来の姿ではないのでは?人間とその他の動物との関わりを改めて考えさせられる一冊。(A)