アズビー・ブラウン著 阪急コミュニケーションズ(210.5/B)
「自分の国のことは結構知らないものだ」と感じる。ましてやそれが江戸時代ともなればなおさら。この時代が、昔教わったように停滞した暗い時代だったのではなく(現在ではかなり見直されてきているが)、特に当時の生活のありようは、今を生きる私たちにとって、実に示唆に富むものであることを、アメリカ人である著者から教えられた。(Y)
石川創著 NHK出版(664.9/I)
「小学校の給食で、よくクジラ肉の竜田揚げを食した」と言えば、世代が分かってしまうが、ここ数年日本の捕鯨調査船が反捕鯨団体シーシェパードに攻撃されるなど、大きな問題となっている。翻ってみれば、クジラそのものについて殆ど知らないのであった。著者は捕鯨の調査団長も務めており、私のようなクジラの素人にも入門書としてうってつけである。(Y)
吉田右子著 新評論(016.2/Y)
「北欧諸国のなかでもっとも成熟した図書館制度をもつ国」と言われるデンマークでは、公共図書館が人々の日常生活のなかに溶け込んでいる。乳幼児のころが保護者と公共図書館に通い、学齢期に達すると、ごく自然に学校図書館と公共図書館を使い分ける事を覚える。学生は、大学図書館と公共図書館を状況に応じて利用しているし、社会人は所属する会社や組織の図書館と公共図書館を利用している。そして、組織から離れた人々は、再び公共図書館に通うようになる。(T)
セス・C・カリッチマン著 化学同人(498.6/K)
「HIVはエイズの原因ではない」というHIV/エイズ否認主義。南アフリカの医療体制は欧米に並ぶものであり、最先端のエイズ科学に通じた人材も多数いたはずなのですが、誤った国策ゆえにエイズは野放しになったのです。その土台となる歪んだ情報を届けたのは、最も「進んでいる」はずの米国の科学者でした。詳細はこの本を読んでみてください。(T)
海野弘他著 山川出版社(230.6/R)
19世紀半ばから20世紀初頭にかけてのヨーロッパの様々な場面での写真。ハプスブルク帝国の王族の写真などはよく見るものだが、モンテネグロ王国やセルピア王国などは珍しいのでは?この時代限定の人々としてパリの「半社交界」の住人、高級娼婦たちの写真とエッセイは興味深い。『椿姫』で有名な世界である。この世界で一晩で使われる金額といったら!同じ時代の都市の労働者たちの写真がないのがちょっと残念。この時代にわざわざ彼(女)らの写真をとる人はいなかったということだろうか。(M)
松岡和子著 新潮社(939F/Ma86)
舞台の『ロミオとジュリエット』を観たばかりなので、男性たちがどのようにジュリエットのせりふを訳してきたか比べたところは興味津々である。こんなにも印象が変わってしまうのか!男言葉、女言葉が(ある程度)はっきりしている日本語ゆえの面白さ(?)かもしれない。せりふは舞台を観ているときは聞き流してしまうことも多い。今まで戯曲を読むのは苦手だったのだが、十分に舞台を味わうためにもきちんとシェイクスピアを読んでみようかな・・・。 (M)
酒井聡樹著 共立出版(816/S)
「わかりやすい文章の・・・」というタイトルに身につまされ、また卒論やレポート作成用にも、と選んでみたものの「『100ページの文章』とは相当長いな」と思ったら「一読で正確に理解できる文章を書く術」をたった「100ページで解説する」という事だったのだ!まさに実践の書。これまでも類書を多数執筆し、好評を博してきた著者の集大成。(A)
高橋誠著 岩波書店(411.1/T)
1枚4円の画用紙5枚に払うお金は?の答えに5x4=20では式はXで答えは○。かけ算に順序は無い筈だが・・・。しかし著者は結論を急がない。そもそも「順序がない」場合の具体例となると、数学者自身も必死に考えなければならなかったというエピソードも。歴史的観点など様々な例を分かりやすく説き、99パーセント文系頭(それは私です)にも奥深い世界が開けてきた(A)。