川口明子著 教育史料出版会(367.21/K)
1930年、同潤会が東京の文京区に建てた、独身の職業婦人(今風にいえば、おひとりさまのキャリアウーマン)のためのアパートをめぐる、悲喜こもごものエピソード。1930年といえば、昭和の最初の頃。まだまだ女性が仕事を持つことに対して理解の薄かった時代。周りからはオールドミスとからかわれていろいろ大変なこともあっただろうけれど、自由に人生を謳歌した女性たちがいたなんて、何だか嬉しくなってしまう。(Y)
鹿島友義著 燦葉出版社(913.36/Ka76)
本書中の推薦文(日野原重明氏!)によれば、著者の鹿島氏は現役のお医者さんで、齢70歳を過ぎて源氏物語に再挑戦されたとか。この物語には病気の場面がたくさん出てくる。当時は今と違って勿論医療も発達しておらず、人々は比較的短命であった。源氏物語については、文学に限らず様々な切り口から多くの本が書かれているが、医学的見地から解き明かすというのもなかなか面白い。(Y)
大橋鎭子著 暮しの手帖社(023/O)
「暮しの手帖」と言えば、花森安治さんですが、その花森さんを創刊当時から陰で支えてきた、大橋鎭子さんの生い立ちから「暮しの手帖」発行に関する裏話など、興味深いことがいろいろ書かれています。表紙の絵もとても面白いです。(T)
梶山天著 角川学芸出版(318.4/K)
自民党公認の現職3人が無投票当選となる予定だったところへ突然立候補を表明し、準備不足にもかかわらず当選してしまったNさんにかけられた、「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープ」についての真実が書かれています。どうしてこういう事件がなくならないのでしょうか。(T)
若生謙二著 岩波書店(480.7/W)
考えてみると動物園にはずいぶんご無沙汰。正直なところ動物園にはさほど興味がなかった。というのは囲いの中の動物(たいてい退屈しきっている)を眺めるだけで面白くないから。一方、サファリパークはその"正反対さ"が不自然なような気がして、それもね・・・という気持ちだった。しかし今、動物園は大きく変わりつつある。人間にも動物にも楽しい場所、と言えるかもしれない。本書で紹介されている世界各地の動物園の魅力的なこと!久々に動物園に行ってみようか・・・。(M)
トリストラム・スチュアート著 NHK出版(611.3/S)
食べ物を粗末にしてはいけないとわかっていても、私たちは賞味期限を過ぎたから、変な匂い(味)がするから、などと言って一見何の問題もなさそうな食べ物を捨てている。これは食料が有り余る先進国だけの話ではないのだ。貧しい国々では管理が行き届かないために貴重な食料が廃棄されている。そして食料の廃棄は環境問題も引き起こすという。本書に掲載されている、溝を埋め尽くす「難あり」バナナ、地平線まで続く捨てられたオレンジなどの写真は衝撃的である。(M)
藤村晃子著 長崎出版 (645.6/F)
ケージに入れられたペットショップの可愛い子犬たち。が、彼らがここに来るまでの殺伐とした「流通経路」を想像したことがあっただろうか。ただただ「可愛い!」と喜んで見ていた自分が恥ずかしくなる。飼い主が「不用」となればゴミの収集同然に「回収車」に積まれ、そして待ちうける苦しみに満ちた「安楽死」。知れば知るほど暗澹たる気持ちになるが、現状の改善への新たな動きもあるという報告に、少しほっとさせられる。(A)
堀博美著 山と渓谷社(657.8/H)
「きのこ切手」は、まあ分かるが、「きのこ映画」「きのこ音楽」って?とついついページをめくってしまう。きのこについての111ものテーマの中身は、生物学上のきのこについてから、文化的なテーマまで、その守備範囲の広さも半端ではない。単なる興味を越えた「愛」(著者によれば「きのこ愛」)無くしては成立し得ない本。(A)