ベルント・ブルンナー著 白水社(489.5/D)
熊は有史以来、人間にとって実に身近な動物である。熊のぬいぐるみなどに代表されるように、愛すべき対象であり、また、一方で、生身の熊は、餌を求めて里に現れ、田畑を荒らし、人を襲う怖い生き物でもある。私たちは熊とどのように関わってきたのか、様々な角度から考察する。本書のあちこちに散りばめられた挿絵の数々と、表紙の熊がなかなかユーモラスだ。(Y)
門池啓史著 元就出版社(334.4/K)
第二次大戦中に活躍したアメリカ陸軍所属の日系人部隊(第442連隊)があったことは知っていたが、
日本軍の中にもそうした存在があったとは! 本書は、戦争中に日本に滞在中、日本軍の兵士となった日系二世の話である。二つの祖国の間で引き裂かれた兵士たちの苦衷は如何ばかりか。聞き書きによる元兵士の証言の一言一言が歴史の重みを感じさせる。(Y)
高木恭子著 家の光協会(146.8/Ta41)
音楽療法とは、音楽の持つ力を上手に使い、ストレスや悩みを抱えた人の心身をケアしようという試みです。使う音楽は、特別なものではなく、子守歌や小学校で歌った童謡や唱歌、歌謡曲や演歌、クラシック、ポピュラー、ロックなど。いろいろな例が出てきますので、悩みのある方は、参考にしてみてはいかがでしょう。(T)
斎藤たま著 論創社(387/S)
人に物を贈る時には、どんなにすばらしいものであっても、「つまらないものですが」、と口上を言うのが、古来、日本人の贈り物に関するマナーであった。贈り物は多くは食品、ご馳走になるのだが、これらには、まものが取り付きやすかった。そのまものをよけるために人々は贈り物の上に、かれらを祓う力ありと見られた唐辛子をのせ、南天をのせ、生臭や、邪悪な眼光をからめ取るような結びをのせた。けれどもこれでもまだ心配なので、贈り物が相手の手に渡る際に聞こえてくるのが「つまらないものですが」である。ことばの上覆いでおおうのである。他にもいろいろ興味深いことが書いてある本です。(T)
進士五十八著 小学館(518.8/S)
全国民を第五種兼業農家に-これが著者の主張である。「農」との関わり方を「精農」「楽農」「援農」「学農」「遊農」に分け、全ての人が気持ちだけでも農家という生き方を選んでほしいという思いがこめられている。ひとりひとりが自分に合った「農」との付き合い方を見つけることが総体として農業再生へつながるはず。そのためのヒントがたくさん紹介されている。完璧主義をめざさずにと著者は言っているが私の場合はもう少しきちんとプランターの世話をしなくては・・・。(M)
ジョシュ・オザースキー著 河出書房新社(673.9/O)
ハンバーグもパンも古くからあるものだが、それを合体させ(パンはバンズと呼ばれる丸いものであること)お馴染みの大量生産のハンバーガーに仕立て上げたのはホワイト・キャッスル社だった。今では当たり前になっている円盤状の肉もホワイト・キャッスルで始まり、どれも同じようなハンバーグにするための特注のフライ返しは聖なる遺物のようにガラスケースに入れて保管されているそうだ。様々な批判にさらされつつもハンバーガーは君臨し続けている。(M)
小澤卓也著 ミネルヴァ書房(619.8/O)
コーヒーは南半球の発展途上国で生産され、北半球の先進国に消費されるというグローバル化時代の南北問題を象徴する農業生産物のひとつ。そしてコーヒー消費国ベスト10の4位(2002年現在)を占める日本は、間違いなく既にその流通システムに組み込まれている。つかのま心や体を癒すつもりで飲む一杯のコーヒーが、他国の人々の今日や明日の苦しみを生んでいるかもしれない、それはもはや想像や選択の余地の無い現実なのだ。(A)
酒井順子著 光文社(291/S)
この本の表紙の絵、なんだか可笑しくありませんか?明らかにもとはあの有名な俵屋宗達の「風神雷神図」。が、よく見ると「へたうま」っぽい線に「ふっ」と笑いたくなるような「風神雷神」の顔は、まさに本書のイメージににぴったり。体裁は外国人観光客への日本案内で、挙げられているテーマもいかにもそれらしく、時に笑いつつ読んでいくうちに、自分を含む日本人の様々な所作が、何か珍妙なものにに思えてくるから不思議。(A)